“蕎麦屋酒”の著者がプロ顔負けの美味探求

第234回
名人のビール注ぎ

久しぶりに新橋の『ビアライゼ98』を訪問した。
ここは、いまはなき八重洲のビアホールの名店だった
『灘コロンビア』で修行した松尾光平さんの店で、
彼が自ら注ぐビールは絶品だ。
1998年に開店した当初は、毎日お客が入らず、
灘コロンビア時代の常連が僅かに来るだけで、
お店の経営は大丈夫かと心配したが、
いまでは毎日満席状態。
料理も美味しく、
しかも、値段は普通のビアホールより安いくらいなので、
繁盛して当たり前の状態になっている。

久しぶりにカウンター席に座って、
光さんの絶技を間近で観察できた。
なにげない動作で、次々とビールを注いでいく。
ビールサーバーは灘コロンビア時代のものを使っていて、
レバーは水平に捻る回転式。
最近の押したり引いたりするサーバーとは異なる。
また、注ぎ口に氷水の中を通って
ビールを送るための螺管(らかん)は
最近のサーバーのものよりだいぶ太い。
つまり、勢いよくビールがでるようになっている。

光さんにお願いして、
旨いビールとまずいビールの
2種類のグラスを飲ましてもらった。
旨いビールはとてもクリーミーな泡がでている。
そして、マッチ棒をその上に刺すと、
そのままいつまでも刺さった状態になっている。
それだけ泡の粘度が高い。

一方、まずいビールの方は泡がすかすか状態で、
マッチ棒は刺したとたんに沈んでいく。
まずいビールの注ぎ方を観察した。
まず、泡が立たないようにビールを注ぎ、その上に泡を乗せる。
そのビールは苦味、酸味が目立ち、喉を通りにくい。
旨く注いだビールは喉への当たりが実に柔らかく、
何杯でも抵抗なく飲めるのと、正反対だ。

で、旨いビールの注ぎ方はどうかというと、
レバーを最大まで開いて、
勢いよくタンブラーにビールを注ぎこむ。
乱暴なようだが、そのときのタンブラー側を片手に持って、
受ける面の角度と位置を微妙に調整している。
泡の立ち方を均一にしているのだ。
その仕草は美しい。
なにげないが、実は気を使っている。
ビールを飲みたいと思うときには、
やはりビアライゼ98は最高の店だ。


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2005年7月14日(木)

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