“蕎麦屋酒”の著者がプロ顔負けの美味探求

第240回
秋鹿のラインナップ 〜その3

最後に「もへじ」と
「嘉村壱号田(かむらいちごうでん)」を飲む。
これは、どちらも無農薬栽培の山田錦を使っているが、
「もへじ」は60%精白で「嘉村壱号田」は50%精白。
また、同じ無農薬栽培といっても
嘉村壱号田のほうが、より自然に近い育て方で、
山田錦を逞しく育てている。

「もへじ」はさすがに旨く、
学生たちもこれまで飲んできた
ラインナップとの違いを口々に言う。
なんといっても、米のほのかな甘みが日本酒の奥に潜んでいる。
それが燗をすると一気にでてくる。
それでいて、飲んだあとのキレのよさで、
口のなかはさっぱりとしている。
米つくりから、窒素肥料を与えずに、
アミノ酸が生成されるのを抑えいるから、
そして、造り、麹造りを丁寧にしっかり行っていて、
綺麗な酸を出しているからだ。

そして、いよいよ嘉村壱号田の試飲。
2000醸造年度のものなので、蔵で4年半寝ている。
しかし、冷蔵保存期間が長かったので、
熟成はそれほどは進んでいない。
ほのかな熟成香が綺麗で繊細、
しかし、力強い味わいを包んでいる。
さきほどは、「もへじ」を本当に旨いと感じたが、
やはり「嘉村壱号田」の旨さは群を抜いている。
ブルゴーニュワインで言えば、
1級と特級の違いくらいの味の差がある。

ここで、ちょっともったいないと思いつつ、
学生たちがよく研究をしてくれているので、
思い切って秘蔵の熟成日本酒を開けることにした。
2002醸造年度の「もへじ」。
当時1ケースの6本とって常温で置いていたものだ。
利き猪口につぐと綺麗な黄金色。
口に含むと、これはなんと言っていいのか、表現も難しい味わい。
力強い熟成の香味が「もへじ」本来の旨みを
より上に押し上げている。
これを飲むと、冷蔵保存の「嘉村壱号田」と、
この常温熟成の「もへじ」が同レベルに思えてくる。
つまり、3年常温熟成をしていただけで、
3倍近く高価な日本酒のレベルになってきている。
学生たちは、これまで飲んだことのない経験に酔いしれていた。
日本の伝統食文化の極みを最大限引き出したのであった。


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2005年7月22日(金)

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