“蕎麦屋酒”の著者がプロ顔負けの美味探求

第256回
舌賛の鮑ステーキ

今年も友人に軽井沢の別荘に誘われて、
食材と日本酒を持って訪問した。
毎年夫婦どおし4人で昔話に花を咲かせながら
ゆっくりと過ごす恒例行事。
今回は、小樽から蝦夷鮑、八角、毛蟹を取り寄せて持っていった。
もちろん包丁も持参。
到着して、早速魚を卸して夕食の準備に入る。

今回の八角は4尾仕入れていたので、
3尾は刺身に、1尾は翌日のバーベキューで焼くことにする。
八角も今年の夏だけで捌くのは4回目。
今回のものも適度な脂が乗っていて美味しそうだった。
3枚に卸してから、薄造りと厚造りと両方を作って、
同じ皿に盛り付けてみた。
薄造りのほうが人気が高かった。
秋鹿「山廃純米大吟醸」と合わせと、
その酸味によって、繊細な甘みが引き出される。
見た目のグロテスクさに似合わない上品な味わいで、話がはずむ。

鮑は今回も肝をまずバターで炒め、
ヘラでつぶしてから醤油と日本酒を絡めて、肝ソースにする。
鮑の貝柱はまず包丁でさいの目を入れておき、
肝ソースを絡めながらフライパンで焼き、
最後に酒と醤油を加えて蓋をして、蒸し焼き状態にする。
あわせた日本酒は、
調理に使った悦凱陣「無濾過純米生原酒」雄町。
悦凱陣は複雑なアミノ酸の旨みがよくでていて、
貝類には実によく合う。
東京で一番と思っていた料理屋の鮑ステーキより旨い
とお世辞を言われたが、本当なら食材のおかげだ。
蝦夷鮑はもともとは関東のクロ鮑と同じ種類だが、
北海道の冷たい海水の環境では大きくならない。
小振りな分だけ、深みのある甘みがあり、
特に火を通すとその旨みがよく出てくる。

毛蟹は浜茹でのもので調理の必要はない。
出刃で足を切り、食べ易いように、殻に切れ目を入れる。
一昨年持参した秋鹿「嘉村壱号田」の1升瓶を
友人がそのまま常温で置きっぱなしにしたものが残っていて、
それと合わせたら至福の相性だった。

翌日のバーベキューで食べた八角焼きも秀逸だった。
皮が硬いので、ホイルも巻かずにそのまま1匹まるごと焼く。
仕上げにシャンパンをかけて、また、火にかける。
皮を剥いて食べた身は蒸し焼き状態になっている。
そして、皮がとても旨い。

学生時代からの友人の別荘で
昔話をしながら楽しんだ美味しい食事は、
時間の流れがとてもゆるやかに感じられた。


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2005年8月22日(月)

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