“蕎麦屋酒”の著者がプロ顔負けの美味探求

第307回
蕎麦屋、饂飩屋、ラーメン屋を比較する

先日は十条「すみた」で素晴らしい讃岐うどんを味わった。
東京ではおそらく「すみた」が讃岐饂飩のベスト店であろう。

熟成を前提として前日に打ったうどんは口にした瞬間に、
腰の強さはもちろんのこと、小麦の甘みがひろがり、
さらに、もちっとした感触がその甘みを包み込む。
出汁は伊吹島のイリコで丁寧にとったもので、
雑味・雑香を全く感じない綺麗でいて深い味わい。
食後の出汁の余韻はいつまでも続く。

「すみた」はおでん、うどん揚げ、じゃこ、
とろろ、天麩羅などのちょっとした酒肴も充実していて、
まずは、悦凱陣、旭若松などの四国の地酒に
それらの酒肴を合わせ、
最後に饂飩を食べるという愉しみ方ができる。
この愉しみ方は蕎麦屋で酒を飲むときと似ていて、
食後の充実度は抜群だ。

しかし、「すみた」は別格であり、
大抵の饂飩屋というと、ゆっくり酒を飲むというよりは、
小腹がすいたときにそれを満たす店というイメージが強い。
本場香川の讃岐饂飩屋も、ちょっと立ち寄って、
饂飩をかけこんですぐに別な饂飩屋にハシゴする、
という使い方の店がほとんどで、
酒をゆっくり飲むという雰囲気は皆無だ。

日本における3大麺のもう一つ、
ラーメン屋でも酒を愉しむ店ではない。
入店するのに行列に並んで長い時間がかかる店が結構あるが、
店内にいる時間はほんのわずかだ。
餃子などのつまみにビールを合わせてみても
30分も持たせることは難しい。

このように、酒を愉しむという観点では、
蕎麦屋が圧倒的に似合う。
これは何故かというと、
蕎麦屋はもともと酒を飲む憩いの場所として
発祥したことによるのは勿論だが、
蕎麦と饂飩とラーメンの麺の性質にもよると思われる。

蕎麦ほどの味わい、香りを饂飩もラーメンも持っていない。
饂飩ではまだ出汁が和風であるので、
日本酒を飲むこととの違和感は少ないが、
麺の愉しみ方が味わいよりも腰の強さのほうに多い。
ラーメンは麺の味わいそのものというよりは、
麺に絡む汁が一番重要となる。
そして、ラーメンの汁の作りは
最初に口にしたときのインパクトが一番であって、
余韻を愉しむものは少ない。
酒をゆっくりと飲むときの食べ物は、
一瞬のインパクトよりは、
味わいの余韻と醸しだすハーモニーを愉しむことになるので、
蕎麦以外の麺は
ゆっくりと酒を飲むことにならないのではと思う。


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2005年11月1日(火)

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