“蕎麦屋酒”の著者がプロ顔負けの美味探求

第314回
カップ酒の落とし穴

最近日本酒のカップ酒が流行っていて
渋谷や恵比寿では専門の居酒屋まであるらしい。
新聞などでカップ酒の話題を取り上げることも多い。
他にも、日本酒関連の単行本が
ここのところ新たに発刊されたりして、
日本酒の復活のきざしと見ている業界人も多い。
日本酒が復活しそうだということは事実だが、
カップ酒の流行はあまりいいこととは言えない。

という理由は二つある。
一つは、カップ酒が流行って、いくら売れても、
小規模の蔵元の利益はほんの僅かであること、
そして、カップ酒は酒の品質劣化防止機能が低いことだ。

第一の利益だが、
小規模の蔵ではカップ酒の瓶詰め設備を購入することができずに、
手作業で詰めて蓋をすることになる。
この手間隙は1升瓶を詰めるのと同じだ。
それにもかかわらずカップ酒は
2百円程度の安い値段で売らなければならない。
人件費を考えると1升瓶の十倍かかる理屈となる。
これでは利益をあげて、
業界の元気を取り戻すことにはつながらない。
旧知の下村酒造(奥播磨)では
廃業した蔵から、カップ酒の瓶詰め設備を安く入手したので、
どうにか成り立っているが、
中古はそうは出回らないので、導入は大変だ。

二番目の品質維持の機能については、
1升瓶は4合瓶よりも優れている。
カップ酒は最低。
何故かというと、容積に対する空気にふれる口の面積比が
小さいほうが劣化が少ないからだ。
カップ酒は口が広く、容積は少量。
しかも、封印してある蓋の密閉度も
1升瓶、4合瓶に比べるとよくない。
それで、カップ酒は劣化防止機能が一番悪いわけだ。

良心的な蔵元では4合瓶でも不十分と考えて、
高品質の限定した日本酒は
1升瓶でしか出荷していないところもある。
一番保管機能に優れているのは斗瓶であり、
これはワインもマグナムが
通常の75デシリットル瓶よりも熟成がよくなることと通ずる。

最近のカップ酒の流行は一部の酒屋がしかけたものだが、
それを受ける日本人もなんと流行に流され易いものかと、
あらためて感じた。


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2005年11月10日(木)

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