“蕎麦屋酒”の著者がプロ顔負けの美味探求

第326回
ふわっとした食感のカラスミが完成

今年はいい天気が続き、5日間ほど干しただけで完成。
圧迫せずに自然にまかせて陰干ししただけなので、
形は整っていない。
しかし、このやり方だと、ふわっと仕上がり、
卵の一粒一粒のぷちっとした感触を味わえる。
圧迫を強くするとねちっとした食感はでるが、
卵の自然な旨みを味わうことができなくなる。

蕎麦切りについても、
つなぎの小麦粉の使い方や、そば粉の成分によって、
ねちっとした感触になることがある。
これを、蕎麦業界では「歯にぬかる」と呼んでいる。
蕎麦の実の中心付近からとった粉は御膳粉とか更科粉といって、
澱粉質が多く、蛋白質が少ない。
この粉で打つと、さらっとしたねばりの少ない
透明感のある蕎麦切りになる。
味は淡白だ。
一方、蕎麦の実の周りのほうは蛋白質が多く、
旨みがたっぷりとある。
この部分の粉を多くして打つと、
粘りのある、「歯にぬかる」蕎麦切りになる。
いわゆる田舎で提供される太い「田舎蕎麦」はその典型だ。
鮨飯も、新米のねばりのある米で握ると、
ねばりが多く、口のなかに入れたときに、はらりと崩れない。
それで、江戸前の鮨屋は古米を歓迎する。

このように、ねばりがある食感よりも、
ある程度、さらっと崩れる食感のほうが、歯の抵抗感が少なく、
その食材の本来持っている味が分かりやすい。
そのような観点から、
かため過ぎたカラスミはあまり好きではない。

今年も形はそれほど整ってはいないが、
ふわっとした食感のカラスミが完成した。
まわりを炙って半生状態で食べれば、
食感と旨みで至福のときが訪れる。
やはり五島列島のボラ子は最高だった。
熟成した純米酒を燗につけて、炙ったカラスミを口に入れて、
すかさず燗酒を流し込む。
口のなかで、カラスミの粒々が暖かい燗酒のなかに浮かび、
味がさらに引き出される。
単純な組み合わせだが、複雑な相性が堪能できる。


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2005年11月28日(月)

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