“蕎麦屋酒”の著者がプロ顔負けの美味探求

第452回
山口県の美味「安平麩」

三重県の津市には、
三重大学に用事があって年に2回ほど訪問する機会がある。
津市にも色々な料飲店があるが、
最近は「オサム」というオデン屋に行くことが多い。
ご主人の試行錯誤の結果たどりついた、
鰹だけでとる出汁がとても綺麗で、落ち着いた味わい。
地酒も黒牛などの燗あがりするものがおいてある。

今年も「オサム」を訪問した。
実に1年ぶり。
ご主人は、先日名古屋の割烹料理屋に
たまたま知り合いに連れられて訪問したら、
私の書いた本が積んであった。
女将さんに自分の店もでていると話をして盛り上がったそうだ。
京加茂のことだった。
名古屋には何軒も割烹はあるのに、まさに偶然。
「オサム」でカウンターに座り、
まずは定番の大根、ガンモ、コンニャク、
コロ、玉子などのオデンに黒牛の燗を合わす。
出汁が浸み込んでいて、素材の旨みと合わさって、
頬がゆるんでくる。

次が、トマト、カマンベールチーズ、
ウィンナーソーセージなどの、ちょっと変化球のオデン種。
こちらもとても旨い。
特にトマトは相変わらず、出汁とトマトの酸味が実によくあい、
至福の味。
黒牛もどんどんと進んで、おかわりをもらう。

そうしていたら、ご主人から
山口県の安平麩(あんぺいふ)という麩を知っていますか?
と訊ねられる。
なんでも、お客さんで山口県出身の人が故郷から持ってきたので、
オデン種にしてみたらとても美味でお勧めという。
そう言われれば頼まないわけにはいかない。
安平麩のオデンは玉子を上から閉じて、
ふわふわ状態にして提供される。
お品書きの名前も「麩ワフワ」となっていた。
しっかりとした麩で、それに出汁がしみ付いていて、
ねっとりとした食感の上に
玉子のふわふわとした舌触りが覆っている。
口のなか全体に旨みが広がり、とても美味。

原料の麩を見せてもらったら、
円盤状で表面がもっちりとふくらんでいて、
色気がある。
こんな形状の麩は初めて見た。
まだまだ知らない食材はいっぱいあるものだ
と感心した三重の夜だった。


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2006年5月23日(火)

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