“蕎麦屋酒”の著者がプロ顔負けの美味探求

第495回
蛸壺漁の取材と浜宴会

三浦半島の蛸は江戸前鮨屋でよく出るが、
その質は高く、明石の蛸を越える旨さに出会うときも多い。
佐島、久留和の蛸はブランドにもなっている。
ところが、その佐島、
久留和を超える日本一旨い蛸があるという話を
知り合いから聴いた。
その場所は葉山の森戸海岸。
そこで、昔ながらの
非効率な漁法にこだわっている漁師がいるという。
早速、その知り合いに紹介してもらい、
一緒に蛸壺漁を見せてもらうことにした。

森戸神社近くの海岸沿いに、
その漁師の矢島四郎さんの浜小屋がある。
約束の午前10時頃に到着。
矢島さんが笑顔で迎えてくれた。
日に焼けて、70歳とは思えない逞しい身体は、
小説に登場する頑固な漁師のイメージそのもの。
しかし、朝の挨拶をして、雑談をし始めたら、
矢島さんは実に人当たりがよく、話しやすいことが分かり、
ほっとした。

前日までの十日間は海が荒れていて、漁にでていない。
海底の砂が波で流れて蛸壺の中に入っている可能性が高く、
そうなると綺麗好きの蛸は入らないから、
今日は収穫が少ないかも知れないと言われる。
ということで、十日前に沈めた蛸壺を回収しに船を出してくれる。
浜に上げられていた定員4人の小さいボートの中を片付け、
出航準備が整う。
ヤマハの船体にスズキの船外機がついているのが面白い。
海までは、砂の上に木や樹脂の棒を横木として何本も敷いて、
その上にボートを乗せて滑らせていく。
そして、着水。
早速我々も乗り込んで出発した。

ちょうど曇りの天気で、海にでると潮風が爽やかで涼しい。
蒸し暑い東京が嘘のようだった。
矢島さんは巧みに操船して、岩の間を漁場に向かっていく。
葉山は蛸ばかりでなく、鮑、海胆、サザエや魚がとても旨いという。
そして漁場に到着。
蛸壺を沈めた綱についている浮きが目印だ。
矢島さんは、船のエンジンを止め、おもむろに綱を引き始めた。
蛸壺漁を見るのはこのときが始めてだった。


←前回記事へ

2006年7月21日(金)

次回記事へ→
過去記事へ 中国株 起業 投資情報コラム「ハイハイQさんQさんデス」
ホーム
最新記事へ