“蕎麦屋酒”の著者がプロ顔負けの美味探求

第498回
絶品このうえなし!浜茹での蛸

浜に戻り、矢島さんは獲ってきた蛸を
その場で茹でてご馳走してくれた。
まずは、塩もみ。
ステンレスボウルのなかに蛸を入れ、
いっぱい塩をまぶして、ヌメリがとれるまでよく揉む。
私もやらせてもらったが、
相当力をいれて、キュッキュッと蛸を押さえつけて
こするようにして、揉んで行くことが必要だ。
相当時間をかけて十分に揉んで、いい具合になった。

その間、矢島さんは薪に火を起こして、湯を沸かしている。
沸騰したので、いよいよと蛸を茹でることになる。
その前にちょっと一仕事。
蛸のクチバシのところに切れ目を入れる。
これで、茹で上がった蛸の足がゼンマイのように巻くようになる。
そして、湯には塩と調味液をわずかに足す。
この調味液は酒と酢の組み合わせ。
その割合は企業秘密とのこと。

そして、蛸の胴の部分を手に持って、
足の先端をまず沸騰した湯につける。
これで、足の先端が外側に反ってくる。
そして、次にもう少し足を深く湯につける。
その状態にしばらく置いてから、
いよいよ蛸の身体全体を鍋の湯に沈める。
湯がぐらぐらと煮立ち、
蛸がだんだんとピンクから赤い色が濃くなってきた。
吸盤の部分の白いところが浮きあがって綺麗に見えてきて、
とても美味しそう。

そうしている間に、浜の散歩に来ていた近所の奥さんや、
東京から引越ししようと思って、
貸家を見にきたという若いカップルが、
火と鍋を見て集まってくる。
矢島さんは、そんな見ず知らずの人たちも拒まずに、
浜茹での試食に誘う。
いよいよ、蛸が茹で上がった。
そして、足と胴を切り分けて、醤油をぶっかける。
この蛸に合わせようと、
東京から持ってきた日本酒である、
能登の「宗玄」、琴平の「悦凱陣」を開けて、
コップに注いで飲む準備をする。

茹で上がった蛸は本当に絶品だった。
まずは、足の丸かじり。
足を口に入れると海の香りがフワッ広がってくる。
食感も硬からず、柔らからず、噛むほどに甘みが溢れてくる。
胴がまた秀逸。
足よりも繊細な旨みを持っている。
胴には宗玄が合い、足には悦凱陣が合う。
一同、美味しい蛸と、美味しい酒、
それに海岸ののどかな景色に酔いしれる。

矢島さんは、次回は蛸だけでなく、
刺し網で獲れた魚介類を準備してくれて、
それでバーベキューをするから、
ぜひまた来てくれと誘ってくれる。
昼下がりの海岸に、こんないい思いをするのは犯罪に近いこと。
これなら、月に一度くらいは呼ばれてみたい。
蛸壺漁に浜茹での美味。
とてもいい休日だった。


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2006年7月26日(水)

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