“蕎麦屋酒”の著者がプロ顔負けの美味探求

第513回
美味しさを究めるには 〜その3 
美味しさを感じるメカニズムを利用する

美味しさを感じる原理を知れば、
それを最大限発揮することによって、
より美味しい思いができることになる。
まずは、美味しさというのは、
味覚と嗅覚だけで決まるものではない。
他に、視覚、触覚、聴覚の五感全てを使って感じているものだ。
それ故、料理の見た目の美しさ、
食感、食べるときの音などによって、
美味しさの感じが違ってくる。

五感全てを使って食べるものの代表は、蕎麦切りがあげられる。
瑞々しい美しさに、まずは食欲をそそられる。
箸で数本の麺を持ち上げて汁を漬けて唇から啜れば、
チュルチュルという音と食感を愉しめる。
口のなかで味わいと香りを最終的に確認して、
蕎麦切りの旨さが完結することになる。

食べ手側の美味しさを決める要因は五感だけではない。
そのときの食べ手の生理状態が重要。
まずは、腹をすかせている状態でなければ、
どんな素晴らしい料理でも美味しいとは思えなくなる。
北王子魯山人は、
どうすれば美味しい思いができるかと
横柄に聴いてきた新聞記者に対して、
腹をすかせることだと答えている。
飲みすぎで胃腸の調子が悪いときや、風邪ぎみのときなどは、
たとえ素晴らしい料理が提供されても、
味が完全にはわからない。
美味しいものを食べるためには、
常に健康状態をよく維持しておくことが不可欠だ。

精神状態も重要で、気まずい話をしながらの食事は、
どんなに素晴らしい料理がでても美味しくは感じない。
美味しい思いをするには、同席者を吟味する必要がある。
健康な状態で、話のはずむ仲間と食べる美味しい料理は、
旨さが倍加する。
また、美味しさには五感とともに、
知識や理解という脳の情報処理も関係が深い。
食材や料理についての薀蓄を知れば、
その料理はより美味しく感じる。

大間の鮪、松輪の鯖、ゆりあげ閖上の赤貝、大原の鮑、
佐島の蛸、明石の鯛、羽田沖の穴子、東京湾の車海老、
などのブランド魚介類、
松坂牛、近江牛、三田牛、前沢牛などのブランド牛肉、
どこどこの農家の有機栽培の野菜など、
食材の薀蓄を聴けば、それだけで美味しさが倍加する。
全く同じ料理であっても、
会社の社員食堂にあるような、
味気の無いテーブルで食べるときより、
割烹や料亭の和のしつらえのある部屋で、
凝った器に入ってでてくると、味は全然違って感じる。
このように美味しさとは狭い意味の味覚だけではなく、
人間が五感と体調と情報を総合して味わっているものだ。
人間の味覚としての美味しさだけでなく、
生理的な美味しさ、心理的な美味しさ、民族文化的な美味しさと、
様々な要素が関連してくる。
それ故、美味しい思いをしたければ、
ただ美味しい食材を準備するだけではなく、
食べ手側の体調を万全にして、
食べる場所の環境も整えていく努力が必要となる。


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2006年8月16日(水)

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