“蕎麦屋酒”の著者がプロ顔負けの美味探求

第566回
土俗村の参鶏湯は懐かしい味

焼肉を食べた翌日が仕事。
「自動車のエレクトロニクスとそのシステム」
という演題で基調講演を行った。
3時間の講演を電気部品メーカーの技術者の方と半々で
1時間半づつ英語でスピーチ。
久しぶりの英語スピーチで、
準備も忙しくて原稿を作る暇もなかったが、
アドリブでなんとかこなして、夜は打ち上げ。
今回はサムゲタンを食べに行くことにした。

店の名前は漢字で「土俗村」(トソッチョン)。
景福宮のすぐ近くにある、老舗のサムゲタン専門店。
こちらも、恵比寿の焼肉屋のご主人、
それから、ソウルによく行く
知り合いの食いしん坊の先生の推薦。
店の入り口は漢字の看板があり、分かりやすい。
相当古い家屋で、座敷が何部屋かあるキャパの大きい店。
入ると奥へ通されて、
そこには4人座れるテーブルが並んでいて、
奥からつめて客がどんどん座っていく。

どこかで見た風景と思っていたら、
森下のさくら鍋の老舗「みのや」によく似ている。
そして、黙っていると普通のサムゲタンが出てくるのも、
「みのや」と同じ。
我々は烏骨鶏を使った黒鶏オゴルゲタンに変更した。
普通のサムゲタンが12000ウォン。
黒鶏が18000ウォンととても良心的な値段。
キムチ数種がまず運ばれてきて、ビールで乾杯。
やがて、真っ黒い鶏が入っているオゴルゲタンが
一人一つの土鍋に入って運ばれてくる。
まずはスープを飲んでみた。
鶏の出汁に朝鮮人参の香りが加わり、
どこかで経験した味わいに似ている。
はっと思いついたのが、幡ヶ谷「龍口飯店」の八宝湯。
身体に優しい味わいで、飲むほどにスープの深みが嬉しくなる。

黒鶏も塩胡椒で食べたり、辛味味噌で食べたり、
スープにキムチを入れて食べたりして、色々愉しめる。
なかにつまっているご飯も旨い。
途中でマッコリをとったが、それがまた合う。
また、最初からでていた小さいグラスに入っている焼酎が
朝鮮人参にすごくよく合う。
食事どきに焼酎を飲むのは本当に久しぶりだった。

さらに、店のサービスは忙しいなかに、温かみを感じる。
帰りにタクシーを拾いたいといったら、
店の外の大通りまで送ってくれて、タクシーを捕まえてくれた。
日本が忘れてきた懐かしい下町の人情が
この店にはまだ残っていた。


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2006年10月30日(月)

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