“蕎麦屋酒”の著者がプロ顔負けの美味探求

第637回
最高の食材とは、その出すタイミングも問題となる

食材のよさとは、その素性がいいだけではない。
どれだけ熟成させたかという、
時間的なファクターが実はとても大切だ。
そして、それは食材の性質によって、
最もよくなるタイミングが異なってくる。
牛肉、豚肉はかなりな日数をかけて熟成しないと
旨みが乗らないことはよく知られている。
天然の魚も一日から三日くらい熟したほうが旨い場合が多い。
その熟成の経過は、同じ種類の魚でも、個体差があって、
それを見極めるのが料理人の腕だ。
これは、ワインや日本酒の新酒を味見して、
何ヵ月後、何年後が飲み頃になるか予測する能力と同じだ。

動物の食材の熟成とは何かというと、たんぱく質の変化で、
熟成によってアミノ酸の旨みが乗ってくる。
植物も熟成して旨くなる。
蕎麦も収穫したてよりも、
二ヶ月くらい経つと、旨みが乗ってくる。
最近では、一年熟成した蕎麦の旨みを確認したばかりだ。
ウドンも熟成した旨みを提供するのは、
十条の讃岐うどんの名店「すみた」。
こちらは、前日にウドンを打って寝かせる。
こうすることで、ウドンの艶もでてくるという。
鮨屋の酢飯も、新米は粘りが多すぎて握りの食感が悪い。
古米となって、さらさらしてきて、
握りを口に入れたときに、
ハラハラと適度にくずれるのがいい。

最近、ウイスキーもボトル状態で長くおけば、
いい熟成を示すことを体験した。
代々木上原のショットバー「カエサリオン」で飲んだ
カナディアンクラブ1954年瓶詰め。
これは、飲み友達が厄払いで
自前のボトルを開けたものをご馳走していただいたもの。
ウイスキー特有のツンとしたあたりが全くない。
口に入ってきて、まるで醸造酒のような柔らか味があって、
その旨みを愉しめた。
蒸留酒は樽詰めのときには熟成をするが、
瓶詰めされてからは熟成しないとも思われているが、
ほんの僅かずつ熟成することが確認できた。

このように、食材はその生まれ育ちだけではなく、
収穫してからの扱いによって、
本来もっている旨みを最大限まで引き出せるかどうかが決まる。
新鮮なものだけが美味しいと思ってはいけない。


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2007年2月13日(火)

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