“蕎麦屋酒”の著者がプロ顔負けの美味探求

第641回
鳴門の魚を堪能

村公一さんから送ってもらった三種類の魚を
柳刃で刺身に切って大皿に盛る。
この柳刃は、京都の錦市場の有次で買った尺一寸の本焼き。
そのときは、在庫の同じ仕様のものを三種類見せてもらった。
手作りなので、重心位置が微妙に違うようで、
それが振ったときの重さの感じがかなり違ってくる。
そのなかで、一番手にしっくりとしたものを選んだが、
とても使いやすく、気に入っている。

まずは、鯛から提供する。
鳴門の鯛もピンとキリがあって、どの鯛もいいわけでもない。
特に磯であがった鯛は海草を食べていて、やや臭みがでる。
海老を食べている鯛が旨い。
今回のものは大手海岸の沖でとれたもの。
プリとした食感のなかに、繊細な旨みが潜んでいて、
噛むほどに深い旨みが溶け出してくる。

次がチヌ(黒鯛)。
村さんの話では、
彼のとる魚のなかでは、二番目に旨い魚という。
では、一番は何かというと、ニベ。
黄色みがかった魚で、雑魚の部類に世間では扱われている。
従って築地でも、出回ることは稀。
このニベは一度だけ
村さんから正月に送ってもらったことがあった。
確かに、とても上品な脂が乗っていて、極上の味を愉しめた。
村さんも、これまで三度しか獲れたことがないという希少な魚だ。

さて、二番目のチヌは確かに美味。
モチとした食感のなかに、旨みがたっぷり。
出汁割醤油で食べたが、ジューシーな味わいで、
口がほころんでくる。
そして、鯔(ぼら)。
関東近海の鯔とは全然違い、臭みもなく、クセも少ない。
通常、鯔の内臓の奥の薄皮部分は
脂がたっぷりついていることが多いのだが、
捌いたときに、この鯔の脂はとても少ないのが分かり、
びっくりしていた。
鯔は、刺身とシャブシャブでいただく。
刺身で淡白な脂の甘みを感じるが、
シャブシャブにすると、それが前面にでてきて、とても旨い。

最後に、自家栽培蕎麦を提供した。
これは、栃木県馬頭で一昨年栽培したもの。
低温で真空パックにして、
丸抜き状態で1年間保存していたもの。
長く置くと老香(ひねか)が出るといわれているが、
この蕎麦には嫌な香りはでていない。
香りは少なくなっているものの、熟成した味わいは芳醇で、
最後を飾る食事として大好評だった。


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2007年2月19日(月)

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