“蕎麦屋酒”の著者がプロ顔負けの美味探求

第653回
鯨が旨い

先日、池袋「楽旬堂 坐唯杏」で、
鯨を堪能する会を開催した。
きっかけは、店主の武内さんが
鯨肉をたまたま入手したということで、
2月は鯨が食べられる特別月間にしている
という案内があったから。

それなら、日本における鯨の第一人者である、
水産総合研究センターの小松正之博士をゲストに招き、
小松博士に鯨の話をしていただくのをセットにしたら、
という企画を考えた。

小松博士とは、最近「江戸前の食文化分科会」で
ご一緒させていただき、
学生の研究テーマの相談などでもお願いしていて、
親しくお付き合いしている。
お願いしたら快く引き受けていただいた。
しかし、小松博士の都合としては、
坐唯杏でとった鯨肉がある2月は忙しいとのこと。
そこで、開催は3月として、
新たに、日本捕鯨協会から鯨肉を取り寄せることとなった。
「坐唯杏」店主の武内さんは、
「イタリア蒸し」などの独創的な割烹料理で、
日経レストラン主宰のメニューグランプリで
準グランプリをとった腕前。
どんな独創的なメニューになるかと思っていたら、
酢味噌和えなどのオーソドックスなものに落ち着いた。

もともと土佐料理「ねぼけ」出身で、
鯨料理は得意な武内さん。
色々考えた末の選択は、伝統をはずれないものとなった。
小松博士には、途中でお話をしていただくことにして、
まずは、丹沢山「隆」で乾杯して、鯨の会はスタート。
前菜は鯨ベーコンでリンゴと牛蒡を巻いたもの。
大根おろしがかかっている。
小松さんには、同席してもらい、
鯨の話をいろいろと聴きながら、鯨を愉しむ。
その話が面白い。

現在の日本は、商業捕鯨ができないことになっている。
ノルウェーやアイスランドはこれに対して、商業捕鯨が可能だ。
何故かというと、日本はIWCに権利を放棄したから。
その背景には米国の圧力がある。
他の漁獲の制限とのセットで論じようという提案があり、
日本はマスの多い他の漁業を優先した判断だった。
これは、捕鯨もやっている大手漁業が、
内部で鯨の部門を抑えて、
他の漁業の部門の意見が優先された結果という。
10倍の収穫量のものを優先しただめで、
片方をゼロと愚かに選択したそうだ。
それで政府もそれに従い、
商業捕鯨禁止の提案に反対を唱えなかった。
ノルウェー、アイスランドは、
IWCの決議に異議申し立てをしているので、
商業捕鯨が可能だが、
日本は永久にその道を自ら絶ってしまった。

そんな興味深い話を聴いているうちに、
次の鯨が運ばれてきた。
宴も盛り上がってくる。


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2007年3月7日(水)

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