“蕎麦屋酒”の著者がプロ顔負けの美味探求

第659回
失われた野菜、忘れられた魚

以前、日本の食糧自給率は約40%と、
先進国のなかでもダントツの最低という話題を
このコラムに取り上げたことがある。
その原因はいろいろあるが、根源に遡ると、
明治のころには文明開化で西洋文明に毒されたのを発端として、
昭和になってからは、戦後の復興で米国の効率至上主義から、
本来の伝統文化をないがしろにしてきたことにあると思える。

その結果、1000年以上の歴史のある
いろいろな伝統文化の継承が難しくなっている。
例えば、漆器つくり。
国内産の漆を使う漆器作家は少なくなり、
本来は手作業でやっていた工程を機械化したりして、
質感が低くなってきている。
そのように、安易に漆器が作れるようになってきても、
漆器作りの修行に踏み込もうとする若者は少なく、
製造量も減少の一途をたどっている。

食文化についても、
生産効率化による、まがいものの食材や食品加工物、
調味料が大半になりつつある。
野菜の栽培方法も、
四季に関わらず短い期間で効率よく育てる方法が
主流となってきている。

そんななかで、昔からの伝統野菜が絶滅しつつある。
このコラムでもよくとりあげてきた「三浦大根」は絶滅寸前。
また、片栗粉は最近では片栗が激減したので、
芋から作っている。
三つ葉も、本来の伝統的な品種ではなく、
西洋三つ葉に代わってきている。
モズクも、本来の細いものではなく、
太い沖縄モズクしか見られなくなってきている。
海産物についても、
絶滅の危機に瀕している和種はいろいろある。
ここで取り上げた「アサクサノリ」を筆頭に、
蛤もいまでは朝鮮蛤に代わってしまって、
和蛤は見られなくなっている。

食文化の危機を、
生産者側、消費者側、流通の問題、
国策などの多方面から検証し、
日本の伝統食文化を子孫に継承するためには、
何を我々がすべきか、ということを考える時期に来ている。
このような観点で、
今年中に単行本を執筆しようと企画している。

日本本来の伝統的な食が失われていく実例について、
その本のなかで多数紹介したいので、
読者の皆様から情報をいただけるとありがたい。


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2007年3月15日(木)

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