“蕎麦屋酒”の著者がプロ顔負けの美味探求

第714回
京都「乃し」での至福の夜は続く

「乃し」のカウンターは6席だけで、
一人ひとりの席の幅が大目にとってあって、
実にゆったりしている。
カウンターの奥行きも深い。

矢口さんと弟子たちが目の前で仕事をしていて、
その向こう側には大きなガラス窓があり、
裏庭の木々の緑が目に映る。
新しい店になって、居心地は随分と向上した。
お造りのあとが椀。
この日は鯛シンジョだった。
器を顔の近くまで持ち上げて蓋をとると、
とてもいい出汁の香りが広がる。
お出汁をすすると、期待どおりの深みのある味わい。

次が鯵の手鞠鮨。
小ぶりの球状に握っていて、
鯵の身のピンク色が艶かしく酢飯の上に鎮座していて、
見事な景色。
鯵の旨みが広がる。
そして、焼き物は琵琶湖の稚鮎。
香ばしさのなかから、心地よい苦味が浸みだしてきて、
黒牛が進むこと。

随分食べたと思っていたら、さらに揚げ物が提供される。
ホタテの貝柱と万願寺唐辛子、それに川海老。
そして、炊き合せが茄子と車海老。
その上に黒い千切りのものが乗っている。
何かと思えば茄子の皮を焼いたものとのころ。
これが、意外に旨い。

もうフィニッシュに近いと思っていて、
さらに提供されたものが二品。
まずは、鮑と牛肉。
どちらも柔らかく蒸した小ぶりな玉葱の上に乗っている。
鮑には芥子黄身酢で和えてある。
これが、しみじみとした味わい。
そして、バイガイの煮物が出て、最後にご飯。
鰹節の炊き込みご飯にジャコがかかっている。
それに、赤だし。
お漬物も旨い。
水菓子は甘みのあるトマトのシロップ煮。
それに豆乳の羊羹。

食べて飲んで一人1万4千円だった。
とても満足できる夕食であった。
支払いを終えて店を後に。
女将さんが玄関を出てずっと見送ってくれる。

その後、連れと別れて、
四条烏丸の近くの日本酒バー「たかはし」を初訪問。
麻生玲央さんから勧められていて、
前から一度行ってみたかった店だ。
旭若松、竹鶴などの熟成酒を愉しむ。
落ち着いていて、地酒の品揃えもなかなかで、確かにいい店だ。
蕎麦の話など、高橋さんと盛り上がる。
まだまだ飲んでいたかったが、
翌日は朝から
日本機械学会の基礎セミナーの講師の仕事があったので、
3杯で切り上げた。
久々の京都の夜に、至福の料理と酒を味わえた。


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2007年6月14日(木)

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