“蕎麦屋酒”の著者がプロ顔負けの美味探求

第723回
総集編5 日本酒は復活したか?

拙著「世界一旨い日本酒」(光文社新書)を発刊してから、
まる2年経過した。
その前から、日本酒の復活の予言をしていたが、
昨年あたりから出荷量は随分向上し始めているようだ。

日本酒業界がより活性化することはいいことであるが、
単純に喜んでもいられない。
というのは、清酒で分類される日本酒のうち、
まだ大半は過度にアルコール添加をした
本来の日本酒の造りとは全く異なるものだから。
地酒ブームの頃から現在の地酒の新時代に入ってからも、
この事情は変わらない。
清酒の大半は大手の酒造メーカーが製造していて、
それも化学工場のように大量生産されたもの。
まずは、大手酒造メーカーが
コスト削減の大量生産の方向を改めて、
品質向上に技術を使うことが必要と思える。

この造る側の転換には、消費する側の変化も必要だ。
まずは、本物の造りの日本酒の旨さと価値を、
多くの酒飲みに広めることができなければならない。
そして、そこに小売酒屋、居酒屋の重要な役割がある。
造り手と消費者の接点として、
いい造りの本物の日本酒を探求し、
それを消費者に紹介していくことが必要だ。
拙著でも展開しているが、
料理に合わせて飲む日本酒の旨さを
消費者に再認識してもらうことが一番のポイントとなる。
まだまだ、いい酒とは香りの高い吟醸酒であり、
それを冷で飲むという考え方が日本酒業界の主流になっている。

吟醸酒は口に含んだときのインパクトは大きいが、
料理に合わせようとすると、
だんだん香りが鼻について飽きやすい。
やはり、香りを抑えて
味を十分に出した純米酒を燗で飲むことこそ、
料理と日本酒の相性の真髄を味わえる。
この事実を知らずにいい酒は冷やして飲むに限る
と頑固に言い張る居酒屋や地酒オタクがまだ実に多い。

先日も代々木上原「魚 こう」で
奥播磨の純米山廃を燗で飲んでいたら、
近くの客が「山廃」は燗で飲まないほうがいい
と意見をしてきたのはびっくり。
では、ゆっくりと燗の旨さについてお話しようと
隣の席に誘ったら、逃げるように帰って行ってしまった。
その客は初めての訪問だったとのことだが、
後日談でその後お店に手紙で失礼を詫びる手紙がきたそうだ。
その中には、知り合いの酒博士に聴いたら
「山廃」は燗がいいと言われたと書いてあったようだ。

最近、漫画家の尾瀬あきらさんともよく話をするのが、
我々が訴えてきたにもかかわらず、
日本酒業界自体が全然変わっていないという事実。
嘆くよりも、今後も純米酒の燗と熟成の旨さを発信して、
日本酒の本当の復活と世界への席巻を期待したい。


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2007年6月27日(水)

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