死に方・辞めかた・別れ方  邱永漢

去り際の美学

第52回
コーヒーをタダで飲んで高いモノを買わされた

「タダほど高いモノはない」とよく言われます。
つい誘われてタダ酒を飲んだり、
タダでものをもらったり、
そのときは何となくトクをしたような気分になるのですが、
結局は何倍もの出費になってハネ返ってくる。
あとになって自分の考えの甘さを思い知らされた経験が、
誰にだって一度や二度はあるのではないでしょうか。

私は旅行が好きで世界のいろんなところを見て回っていますが、
インドや韓国では買い物をしようと思って店にはいると、
よその店からコーヒーやジュースを注文して
出してくれることがよくあります。

その代金を、客の前で払ったりする。
そんなに出費をかけては悪いから、
何か買わなければいけないような気分になって、
つい高いモノを買わされたりします。

もちろん、買う買わないはこちらの自由ですが、
そこまでサービスされると、
何も買わないで店を出るというのは、
なかなか勇気のいることでしょう。

あるとき、韓国で買い物をしているときに、
そんなサービスを受けて、バカをみたことがあります。

ウォンで買ったつもりが、
いつのまにか、円の交渉ということになり、
円で支払うハメに陥りました。
円とウォンでは、
七十パーセントくらいのひらきがあったときのことです。

こんな商店のサービスの習慣は日本では見あたりませんが、
同じように「タダなんだから」と思っていたのが
結局は高くついたということが、
日常生活のここかしこに見られるようです。

もちろん、国によって習慣の違いはありますが、
親切にされるとつい情にほだされるのが人情です。
そういうところにつけ入られることもありますので、
いい気になってタダ飯、
タダのコーヒーにとびついてはいけません。

イタリアなどに行くと、
タダのコーヒーを飲まされたばかりに、
あとで、ナイトクラブに連れ込まれて
何百ドルも被害を受けたという実例にはこと欠きません。





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2013年5月23日(木)

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