死に方・辞めかた・別れ方  邱永漢

去り際の美学

第86回
相手の喜ぶ品物を贈ってこそ、お金を上手に使ったことになる

いくらお金を貯めたいと思っている人でも、
ときには世話になった人に贈り物をしたり、
後輩にごちそうしたりする必要があります。

人間関係をスムーズにするうえで、
それは必要なことです。
私はむかしから、人にごちそうすることが好きで、
家へ招待することも多いんです。

そんなとき、どちらかというと、
若い人ほど手厚くもてなすようにしています。
プレゼントをするときでも同じで、
若い人にはできるだけいい物をあげるようにしているんです。

たとえば、かけ出しのサラリーマンを
上等なレストランに連れて行く。
あるいは、三、四万円もするミラ・ショーンのネクタイを
プレゼントする。
あんまりそういう経験をしていないときは、
一生忘れられない思い出になります。

こうした私のやり方を見て、
「邱先生は、なんであんなつまらないやつらに
ごちそうするんですか、ムダ使いじゃないのですか」
と言った人間がいます。
私は「じゃあ、あんたもその中の一人になりますね」
とまぜっかえしたことがありました。

同じことを、社長の地位にあるような人にやったとしたら
どうでしょうか。
ふだんからちやほやされている人は、
それが当たり前だと思っていますから、
高級品をプレゼントされてもそれほど感激しない。

いちばん上等の食事をごちそうしたとしても、
特別に印象に残ることはありません。
贈り物をするとき、
たいてい目上の人には高価な品物を、
目下の人には安いモノをというふうに、
地位や年齢でランクを変えるようですが、
それではお金をうまく使ったことにはならない。

同じお金を使うのでも、
使っただけの効果がなければもったいないでしょう。

その意味から言えば、
いろいろなモノをたくさんプレゼントするよりは、
値打ちのあるモノをひとつだけとか、
相手の喜ぶ物をひとつだけプレゼントする。

あるいは、お中元やお歳暮など、モノが集中するときを避ける。
それが、上手なお金の使い方につながるのではないでしょうか。





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2013年6月29日(土)

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