死に方・辞めかた・別れ方  邱永漢

去り際の美学

第94回
たとえ夫婦・親子のあいだでも、金銭面のけじめをはっきりさせる

事業に成功した人を見ていると、
締めるところは締めるけれども、
使うところはちゃんと使います。
その区別が、まことにはっきりしているんです。

いっぽう、父親の仕事や財産を受け継いだ人を見ていると、
締めるほうと使うほうのバランスがとれている人が少ないんです。

父親のケチなところだけ見て、
世の中はケチでとおせばいいんだと考え、
父親以上にケチになる。
かと思うと、逆に、父親の気前のいいところだけを見て、
お金をバンバン使ってしまう人が多いようです。

何が必要経費で、何がムダかは、
その人の生活哲学によって違ってきます。
また、その人が過去にどういう体験をしたか
ということともかかわりがあります。

冠婚葬祭ひとつとっても、いくら払ったらいいのか、
お歳暮やお中元にしても、
どういう基準でモノを贈ればいいのか、
人によってみんな違うと思うんです。

贈り物をするとき、
世間のしきたりをそのまま受け入れる人もいれば、
もっと目立つ方法を考える人もいる。

たとえば、みんなと同じ時期に贈っても、
たくさんもらった中ではぜんぜん目立たない。
だから、お中元やお歳暮の季節を
避けて贈ろうと考える人も出てくるわけです。

贈り物は、贈られる側の状況によっても、
ずいぶん価値が変わってきます。
いつもサントリーのホワイトしか飲んでいないような若い人に、
私はよく、ナポレオンのブランデーなんか出します。

ナポレオンを出しても当たり前の人に
ナポレオンを飲ませても印象には残りませんが、
ナポレオンなんか飲んだことのない人だと、
いつまでもおぼえていてくれるでしよう。

同じナポレオンでも、下戸にあげても、
ぜんぜん喜ばれません。
また、毎晩、社用で銀座を飲み歩いているような人には、
ナポレオンといっても珍しくもないから、
ありがたいとは思われないでしょう。
そういう人にナポレオンを贈るのは、ムダなことです。





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2013年7月7日(日)

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