死に方・辞めかた・別れ方  邱永漢

不動産から学ぶ経済の成り立ち

第51回
売れ残りにも福がくる

不動産にしても株にしても、それが存在している以上、
誰かがそれを所有している。
それを所有していることがトクか損か、
あるいは大きな財産を意味するのかどうかは、
どういう時代的背景になっているのか、
どこの土地やどんな銘柄を持っているのか、
また手に入れたときから今までにどのくらい値があがったか、
といったことによって違ってくる。

たとえば、不動産を持つにしても、
不動産を業とする人もあれば、
ほかに本業を持っていて財産を保持する手段として
不動産を持っている人もある。

不動産を業とする人は、
戦後最もあがったのは不動産だから、
その恩恵を最も受けたと思われがちだが、
必ずしもそうではない。

土地を買ってビルやマンションを建てて
賃貸業に徹してきた人は
不動産の値上がりで大きな資産家になっている。
反対に不動産の仲介をしてきた人は、
仲介料を稼いだかもしれないが、
不動産を取得していなければ、
ほかの商品の仲介業と同じく
基本的にはコミッションで生活をしているだけのことである。

ただ不動産を扱っておれば、
不動産に対する情報には通じてかるから、
不動産の出物を買うチャンスには恵まれる。

ただし、不動産を扱っているだけに売るチャンスも多いから、
少し高い値段をつけられると、
ついフラフラとなって売ってしまう。
だから仲介業をやってお金を残す人は意外と少ない。
マンション業者や建売業者にもほぼ同じことが言える。

土地を仕入れてきて、
その上に健物を建てて売りに出す。
このプロセスは原料を仕入れてきて加工をして、
何がしかの付加価値をつけて物を売る工業生産と
本質的に何の変わりもない。

違うところと言えば、自動車やテレビは、
いったんおろして使えば中古品になって値がおちてしまう。
自動車などナンバーつけて車輪を土の上でころがしただけで
二割は値下がりしてしまう。

一年もたてば買値の半分になってしまう。
それに対して不動産は売り損なって残ったものでも、
次のブームがくると、新しい相場まで値上がりをする。
中古でも、 買値の三倍にも五倍にも売れる。

基本的には、建物が値土がりしているわけではなく、
土地の稀少性が物を言っているのであるが、
商品としてのこの違いは大きい。

したがってマンションや建売りの業者は、
ほかの雑貨や酒屋やレストランをやっている人に比べると、
金持ちになるチャンスが多い。

扱っている物そのものの金額も大きいし、
売れ残って手持ちしている間に
値上がりをすることも多いからである。

そういう意味ではあんまり商売上手で、
売り出すたびに完売御礼の広告をするのも考え物で、
むしろ適当に売れ残りが出て頭を抱えるくらいがいいのである。
さもなければ、売る物と残す物をはじめから区分けして、
賃貸業を兼業するくらいでなければ、
産をなさないのである。





←前回記事へ

2013年9月18日(水)

次回記事へ→
中国株 起業 投資情報コラム「ハイハイQさんQさんデス」

ホーム
最新記事へ