至福の一皿を求めて おいしさの裏側にある話

第4回
愛されるリストランテ

私が今まで行った中でも
特別な思い入れのある店があります。

北イタリア・ピエモンテ州の山の上、
アルバレット・デッラ・トッレにぽつんと建っている
リストランテ『ダ・チェーザレ』。
アルバという街からクルマで約30分ほどでしょうか。
果てしなく広がる葡萄畑の中を
ひたすらクネクネ上って行くと
こんな所に本当にリストランテがあるのか、と
不安になった頃
その店はひょっこり姿を現します。

ドアを開ければ、誰かの家に
お招ばれしたようなあたたかみのある空間。
テーブルには、真っ白なレース編みに
花の刺繍を施したクロスがかけられ、
毎日手書きするというメニューには
野菜や葉っぱで作ったスタンプがペタペタ押してあったり。
ふと見ると、
壁には常連客が描き残した
スケッチが飾られていたりします。

この店のシェフ、チェーザレ氏の
スペシャリテ(看板料理)は、
サーラ(フロア)の奥でパチパチと音を立てる
カプレット(仔ヤギ)の暖炉焼き。
名の通り肉を暖炉で焼く
それだけのシンプルな皿ですが、
水と空気すらおいしいあの土地の
ふくよかな草を食べて育った仔ヤギの肉は
滋味に溢れ、なんて香ばしいこと!
地元ピエモンテ、イタリアはもちろん、
ヨーロッパやアメリカからも
このひと皿を求めて、
客は山道をクネクネと上って来るのです。

しかし、ミシュランの星はありません。
昔ミシュランの調査員とケンカしたとか
1つ星を辞退したとかいう噂がありますが
この店のテーブルで
焼きたてのカプレットにかぶりつけば
そんなこと、もうどうでも良くなってしまうのです。


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