至福の一皿を求めて おいしさの裏側にある話

第3回
おいしい食事、楽しい食事

皿の上にのっかっているのは
お料理だけれど、
作ってくれた人そのものでもある。
皿の向こうにもストーリーがあるということを
前回、お話ししたのですが
じつは私も、料理を見ただけで
どこで、どんな修業をした人なのか
一発でフムフムと見破ってしまうような
達人の域にはぜんぜん達していません。

で、私がすることはというと
給仕してくれる人に話しかけるんです。
たとえば、現地で食べた料理や
知っている料理が出てくると、それを手がかりに
「あの辺りで修業されたシェフですか」とか
「こういう料理が得意なんですか」とか
皿を下げるときなどに聞いちゃいます。
もちろん、手がかりのないときでも
「どこの地方の料理なんですか」
から始めればいいですよね。

そのスタッフが、ちゃんとしたプロであるなら
たとえ忙しくても忙しさを感じさせずに
喜んで、きちんと答えてくれます。
「行かれたことがあるんですか?」と
逆質問されて話が弾むこともあるくらい。
そうなるともう
目の前で平らげたお皿の印象は
くっきりと記憶にインプットされるでしょう。

もちろん食事中の
スタッフとの長話は慎みますが
帰り際にはシェフが厨房から出てきて
直接お話しすることもままあります。
修業先の話や店で扱う食材の話、
ワインの話にお店のインテリアの話まで
いろんな話が飛び出したり。

それが料理と何の関係があるんだと思う人も
いるかもしれませんが、
私の場合、そんなふうに盛り上がって店を出ると
「ああ、おいしかった」だけでなく
「ああ、楽しかった」と
本当にしあわせな気持ちになります。
ちょっと大げさですけど
人生全部の食事のうち、何万(何十万?)分の1かの、
でも限りある食事のうちのひとつを
ここに決めて良かったと思ったりまで
してしまいます。

人とお料理、人とレストランは
人と人がそうであるように
一期一会だとしみじみ感じる瞬間です。


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