至福の一皿を求めて おいしさの裏側にある話

第23回
厳しい冬だからこその味わい

ハタハタは、しょっつる鍋のほか
素のまま焼いたり、煮たりもしますが、
一夜干しにもしますし
塩漬けや三五八漬け(さごはち。
塩3・麹5・米8の割合で漬けたもの)、
ハタハタ寿司という飯寿司でも食されます。

もっと言えば、
三五八の割合も家庭によって微妙に違ったり
ハタハタ寿司の作り方も
秋田杉の樽に漬け込むとか
いろいろなやり方があるようです。

周りに聞いてみると、ほかにも
田楽にしたり、私は食べたことがないけれど
唐揚げにする家もあったり、
家単位で、じつにさまざまな調理法や
食べ方が存在していて
あらためてびっくりしました。

昨年の暮れに、実家から
今年豊漁だったという大ぶりの子持ちハタハタを
秋田味噌に漬けたものと、
粕漬けにしたものが届きました。
母のお手製です。

一般に秋田は辛口の赤味噌といわれますが
わが家では、県が開発したという
“ゆらら酵母”で作られた
白の秋田味噌を使っています。
香りの立つ、ほんのり米麹の甘さを感じる味噌と
淡泊ながら脂ののった
旬のハタハタは最高の相性。
粕漬けもほど良い酸味が利いて
純米酒と一緒にいただけば、
これがまた
何尾でも、何杯でもいける(笑)。

昔の秋田人にとっては、
雪に閉ざされた時期の長いこの土地で
ハタハタは貴重なたんぱく源になっていたそうです。
けれど、先述の通り
大量だけどごく短期間にしか獲れないために
知恵を絞って、手を替え品を替え
いろんな保存法や調理法で食べざるを得なかった。
だから今、
同じ秋田でも地域や家庭によっても違う
とてもバリエーションのある楽しみ方ができる。
厳しい気候や生活環境が育てた
おいしい知恵なんですね。

そう思うと、昔の人の苦労には申し訳ないけれど
日本海の荒波や、降り続く雪にも
感謝したい気持ちになりつつ
またまた一杯、と盃を重ねる私です。


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