至福の一皿を求めて おいしさの裏側にある話

第24回
新米の季節は、きりたんぽ鍋

秋、黄金色の稲穂がたわわに実り
新米が収穫されると、
秋田では
きりたんぽ鍋のシーズンに突入です。

「たんぽ」は、竹輪とよく間違えられるますが
練り製品ではもちろんなく、お米で作られています。
ごはんをすりこぎで突いて
粒々が残る程度に潰し(なんと、これを半殺しと言います)
秋田杉の太い串に巻き付けてから
炭火で焼いたもの。
たんぽを炉端に刺して焼く
あの映像を見たことがある人も多いのでは?

米どころですから、ごはんは
みずみずしく香りの高い新米にこだわります。
けれど県内でも銘柄だけは
昔ながらのササニシキ派と
粘りけのあるあきたこまち派に分かれるとか。
私は……内緒にしておきます。

このたんぽを2〜3等分程度に
斜め切りしたのが「きりたんぽ」。それを、
比内地鶏の鶏ガラで取ったスープに
酒と醤油とお好みでみりんを加え、あとは
比内地鶏、ささがきごぼう、ネギ、マイタケ、セリでOK。
ただし、セリは根っこも良く洗い一緒に入れること。
シャキシャキの歯触りがこれまたいいのです。

ちなみに、比内地鶏は
肉質も弾力に富み、しなやかでコクがある。
脂はたっぷり濃厚なのにサラリとしている。
格別においしいというのはわかっていても
普段食べる分には、やっぱり高価です。
だから家庭ではもっぱら
普通の鶏肉を使います。

私の実家では、そのほか
糸こんにゃくや、ときどき油揚げを入れたりしますが
豆腐は入れません。
でも友達の家では焼き豆腐を入れるし、お砂糖や
鶏のモツも入れてしっかりとコクを出すそうです。

うちの母は七味を使うのも邪道だと言いますが
東京の友達にごちそうしたとき
迷わず七味を振りかけたその人は、
おいしそうに食べていました。
あるお店で食べたときは
七味ならぬ五味なるものを使っていて
私はそれもアリだと思いました。

それにしても
きりたんぽ鍋の話になると、秋田の人は
ちょっと白熱しますよね。
と言うか、鍋将軍という言葉が存在するように
日本人全体が、自分ンちの鍋を語らせたら
目の色が変わる。

鍋は家庭の味、家族の象徴。
具も出汁も、味付けも食べ方も
いろんなルールがあるからおもしろい。
自分ンちの絶対が
他人の家の絶対ではないからおもしろい。


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