至福の一皿を求めて おいしさの裏側にある話

第60回
日本酒ができるまで(刈穂編)

日本酒造りの工程は、
とても複雑でわかりにくいものです。
酒蔵によっても手順や手法が違いますが、ここでは
刈穂酒造の例で、簡単にご紹介してみます。

1 精米
玄米を削ります。
ちなみに精米歩合(削って残った部分の割合)は
純米酒で70%以下、吟醸酒は60%以下、大吟醸は50%以下。

2 洗米・浸漬
精米した米を洗い、水を吸わせます。
精米率によって吸水率が違うため、
浸漬時間は秒単位で変えます。

3 蒸し米
吸水させた米を一晩おき、昔ながらの和窯で蒸します。
蒸し上がった米は荒熱を取り、
麹用、酒母用、もろみ用の3つに分けられます。

4 麹
麹室(こうじむろ)と呼ばれる部屋は
本醸造・純米・吟醸で室温29〜32・33度、
大吟醸は40度近く。そんなサウナ状態の部屋で、
蒸し米に麹菌を植えて麹を造ります。
お酒の種類によって麹の作り方は異なり
純米・吟醸では丸2昼夜、大吟醸は60時間以上かかります。
刈穂酒造では、大吟醸用の麹は
専用の麹室で、麹蓋(こうじぶた)という
天然秋田杉の箱でつくられます。
完成した麹はふっくらふくらんで、噛んでみると
ほんのり甘みがありました。

5 酒母
酉編に元と書いて「もと」とも言い、
完成した麹と水、蒸し米に酵母を加えたもの。
もろみの発酵を促すための、元気な酒母を培養します。
刈穂酒造には乳酸を加えて醸造を早める速醸用の酒母室と
自然に乳酸をつくる山廃用の酒母室があり
速醸の酒母は14〜15日、山廃は約35日で完成。

6 もろみ(仕込み)
酒母に麹、蒸し米、水を加えて発酵させ、
もろみと呼ばれる原酒を仕込みます。
仕込みは初添え・仲添え・留め添えの三段仕込み。
1日目の初添えは、たとえば1500kgの容量の場合なら
約1/5の量を仕込みます。
2日目は「踊り」といい、酵母が元気に増殖するのを
待つため1日休ませます。
3日目の仲添えでは、約半量(750kg)を仕込みます。
4日目は留め添え。
残りすべてを仕込み、20日ほどかけて発酵させます。

7 搾り
もろみを搾ります。
今では圧搾機で搾る酒蔵が多いのですが
刈穂酒造では、大正時代からの方法である
槽(ふね)を使い、2日かけて行います。
酒袋に入れたもろみを、内側が竹のすのこ状になった
槽に重ねていって重しをかけると、
酒が槽からゆっくりと流れ出します。
3日目に粕むき(酒袋から粕を取る作業)をします。

8 約60日かけて日本酒が完成
この後、ろ過、火入れ、貯蔵されて出荷を待ちます。

こうしてみると、日本酒とは
なんと不思議なお酒でしょう。
米粒が溶けて発酵し、おいしいしずくになる。
辛抱強くご機嫌につき合い続けた、たまものです。
もうすぐ雪が解け、春がきます。
各地で新酒の鑑評会が行われ
酒蔵が力を競い合う、熱い季節です。


和窯で酒米を蒸す



プチプチと音を立てて発酵する酒母

もろみの表情

槽(ふね)
 

 


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2004年3月12日(金)

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