至福の一皿を求めて おいしさの裏側にある話

第63回
ボサノヴァとイスラエルワイン

「飲む」ためでなく
「いる」ためにバーに行くことがあります。
そういうときは私の場合
好みのお酒と、ほどよいサービスと
そして音楽が重要。
ジャズ、ソウル、ボサノヴァ、ときにはサルサ。
で、お休みの日には
なぜかボサノヴァがしっくりきます。
この音楽には
心をふわふわ浮かせて、どこかに
連れてってくれるような心地よさがあるのです。

渋谷の奥の路地にある『BAR BOSSA』は
その名の通りボサノヴァとワインのバー。
壁には古いLPジャケットが飾られ、
懐かしいボサノヴァが小さな店に満ちています。
泣きたくなるくらい優しい音に
ふと探してみたら
やはり、レコードプレーヤーがありました。
有線やCDにはないやわらかな響きです。

ここでは、フランスワインを中心に、
スペインやイタリアなどのワインが
ボトルやグラスで、そして手頃な価格で楽しめます。
ある日、何にしようかな……と
日替わりグラスワインが書かれた黒板に目をやると
そこに「イスラエル」の文字を見つけました。

「イスラエルのワインですか」
感心する私に、バーテンダーは
「古くからワインのある国ですよ。
(旧約)聖書にもあるくらいですから」
と教えてくれます。
聖書。その特別な言葉を聞きながら、私は
最近の危険な情勢と、
イスラエルからメールで送られてきた美しい景色と、
その場所でこのワインを飲んでいるかも知れない
メールの送り主を思いました。

送り主は、イスラエルでコックをしている日本人で
地中海の魚介や地元の野菜を使って
さまざまな国の料理を作っているそうです。
パソコンに映し出された映像は
本当に同じ国で、
あの激しいテロが起きているのだろうか
と疑うくらい光に溢れた、自然の豊かな、平和な光景。

深く複雑な歴史を背負いながらも
紀元前からワイン造りをしていたという国の
赤ワインを一杯 、頼んでみました。
YARDENのメルロー、2000年。
濃縮感のあるしっかりした味わいの赤ワインで、
香りには少し磯っぽさを感じます。
「おいしい」
ワインのせいか、ボサノヴァのせいか
この言葉を
遠い国の人に伝えたくなりました。

数日後。
メールの返事が来ました。
「今度は白も飲んでください。
(イスラエルでは)これから暑くなってくると
白ワインがおいしくなってくるので……」
彼が旧約聖書の国で飲む白ワインは
渋谷では、どんな風に感じるのだろう?


■BAR BOSSA
東京都渋谷区宇田川町41-23-1F TEL 03-5458-4185
URL http://www.barbossa.com/


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2004年3月17日(水)

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