至福の一皿を求めて おいしさの裏側にある話

第70回
『ピッツェリア・タッポスト』(後)・職人の世界

ピッツェリア『ピッツェリア・タッポスト』の
ピッツァイオーロ(ピッツァ職人)である青木さんは
もともとエンジニアであり
クルマ好きで、イタリア好きだったそうです。

イタリアに旅したとき
ナポリでピッツァを食べてものすごく驚き、
このおいしさを日本に伝えたいと思ったのだとか。
まだ、日本では
生地が薄くクリスピーなカリカリピッツァや
アメリカ経由のパンピザが一般的だった時代です。

エンジニアからピッツァイオーロへ。
ひとりの人生を変えたピッツァは
いったいどんな味がしたのでしょうか?
ともかく、青木さんはそれを味わってしまったがために
会社勤めをしながらイタリア語を勉強し、
ピッツァの研修ツアーに参加して
修業先にするピッツェリアの目星をつけてから退社。
日本から手紙を出して
カンパーニャ州ナポリ・イスキア島の
『ピッツェリア・ダ・ガエターノ』に採用され
トータルで約6ヶ月間修業しています。

私が知っている限り、ピッツァイオーロの場合
リストランテのコックよりも
圧倒的に短期間の修業で店を出す人が多いので、
「どのくらいで一人前になれますか?」
と訊くと、やはりというか
「僕もまだ一人前ではないです」
という答が返ってきました。

ピッツァの場合、
たしかに生地+トッピングのバリエーションという
シンプルな構成ですが、
その生地が命。
ピッツァイオーロは、いつでも思った通りの
生地作りができて一人前なのだそうです。

小麦粉などの材料なら
最近ではイタリアからの輸入物が手に入りますが
同じものを使っていても、ここは日本。
イタリアとは水も、気温も湿度も違う、
ましてや四季によって変化するなか
コンスタントに同じ質の生地を作り続けることは
非常に難しいといわれます。

それは、子どもの頃からピッツァを作っていたような
イタリア人のピッツァイオーロでも
日本では同じ生地を作れないと言うほど。
もちろん売り物として提供できるレベルの話ですが、
青木さんもまた
生地に納得がいかないときは
焼くのが嫌になるほどヘコむのだとか。

2度目に来店したのは、
前日まで気温が20℃近くあり、再び急に冷えた日でした。
食べたのは、ピッツァ・ドック1900円。
水牛のモッツァレラチーズを使ったマルゲリータで、
乳牛のものなら1500円です。
おいしいおいしい、と叫びながらかぶりつく私たちに
「今日の生地は、うーん……」
と思慮深げに首をひねる青木さん。
……え、そうなの?
1日数百枚分を、毎日焼いても毎日違う
それは奥深い、職人の世界のようです。


■ピッツェリア・タッポスト
東京都練馬区早宮4-37-29-1F TEL 03-5999-3988

※価格は3月現在。4月からは表示改正により変更になります。


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2004年3月26日(金)

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