至福の一皿を求めて おいしさの裏側にある話

第69回
『ピッツェリア・タッポスト』(前)・遊園地の街のピッツェリア

いつ来たか思い出せないくらい久しぶりに
西武池袋線の豊島園駅に降りました。
閉園後の真っ暗な遊園地とは逆方向へと歩き出し
庭の湯を越え、トイザらスを過ぎて、約7分。
『ピッツェリア・タッポスト』は
そんな場所にありました。

びっくりしました、賑わっていて。
最初は日曜、次は金曜に行きましたが
とくに日曜は3回転するテーブルもあったほど。
この界隈の人たちがみんな
こういうお店の登場を待っていたのか。
いや、写真を撮っている人もいたので
遠方からもいらっしゃる方や
遊園地帰りのファミリーもいたのでしょうか。
ちなみに日曜は誕生日を祝う人がいたり、
金曜には「今度練馬に引っ越すのでよろしく」と
挨拶しているグループもありました。

『ピッツェリア・タッポスト』が
オープンしたのは1999年。
豊島園駅の街(練馬区早宮)を選んだのは、
オーナーであり、ピッツァイオーロ(ピッツァ職人)の
青木嘉則さんが育った地元だから。
店の裏にある畑では、ご両親が
ハーブやトマトやブロッコリーなどを育てていますが
ちなみに青木さんは手伝いません。
なぜなら
「下手に手伝うと怒られるんで(笑)」
だそうです。

私が食べたルッコラのサラダも
一般的な、柔らかく丸みのある形のルッコラとは
形も味も違った
厚く、濃い緑の元気な葉肉でした。
畑で作れるものは作ってもらっているのだそうで
季節になればバジルもおいしいのだとか。

都心でお店を開こうとは思いませんでしたか?
そう訊ねると、
「お金があれば考えましたけど」
青木さんの、淡々とした声が返ってきました。

しかしもはや30年ローンを組み、
彼曰く「節約のために」
自らワインラックやカウンター、キッチンなどの内装や
ピッツァを焼く薪窯をも図面を引いて設計し、
店内の壁塗りまでして作り上げたお店は
それ自体、青木さんの作品のようにも思えます。
ちなみに薪窯はモザイクタイルを
1枚1枚手作業で貼り付け、
友達と2人で2ヶ月かかって完成した力作。

元エンジニアだったから、
設計もお手のものだったのかも知れませんが
ご本人は
「やっぱりプロとは出来が違いますよね」
そう言ってしげしげと店内を眺めました。
私もまた、
あらためて見回してみます。
あたたかい色の塗り壁、
生地を打つ大理石のテーブル、
タイルで'tappost'と名前が入った、
修業先と同じオリーブグリーンの薪窯……。

それらに囲まれて、このお客さんたちに支持されて
『ピッツェリア・タッポスト』は
今年でもう5年目に入ります。


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2004年3月25日(木)

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