至福の一皿を求めて おいしさの裏側にある話

第79回
いいサービスって何だろう

イタリアでは、コックだけでなく
サービスを務める
カメリエーレやカメリエーラも修業しています。
以前彼らに取材したとき、逆に
「今、日本でサービスが素晴らしいお店はどこですか?」
と訊かれて
うーん……と頭を抱えたことがあります。

私の場合
その店にもう一度足を運びたいと思わせる要因は
かなりの割合でサービスです。
レストランは総合点。
料理、飲み物、建物、内装、音楽、客層、食器、価格、
そしてサービス。
それらが混ざり合って醸し出す雰囲気で
店の印象が決まりますが
実際、通っているお店を思い浮かべてみると
なぜか気に入っているレストランは
やっぱりサービスが非常に影響している。

なのに「サービスが素晴らしいお店」と言われて
悩んでしまったのは、
そういう店が少ないからではなく
「自分が気に入っているサービスは、
みんなにとってもいいサービスなのかな」
ということ。そして
「じゃあ、いいサービスって何だろう」
という疑問なのです。

日本ではまだ
ヨーロッパ並にはサービスが成熟していません。
何を訊いてもわからない人だとか、
無愛想すぎてとりつくしまのない人、
逆に、精一杯の笑顔しかいいところがない人など
基本的な問題を抱えているサービススタッフが
少なからずいたりします。
それは本書で、
チップの習慣=チェックの目=金額でシビアに表れる
という仕組みが
日本にはないことと併せて触れましたが
それでも
店側がサービスの重要性に気づき始め
サービスのプロを目指す若い人が育ってきた今
レベルは上がってきつつあるともいえます。

しかしその一方で
日本のサービスが変な方向に向かっている
危機感を感じるのです。

心のない笑顔や、謙譲なのかわからない変な日本語。
子離れしない母親のような、手取り足取りの接客。
丁寧っぽくしておけばいいだろう
という安っぽい考えが、見え隠れしています。

サービスする、ということに対して
理想はあるけれど芯がないというか
なんというか、
ねじれてしまっている。
結局、形をつくるのに一生懸命で
肝心なことから目を背けている。
そんな店が少なからず存在し、もしかしたら
増殖しているような気もします。


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2004年4月8日(木)

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