至福の一皿を求めて おいしさの裏側にある話

第88回
ゆっくり過ごすためのビール

春のやわらかい雨がザーザー降っている夜
西池袋・芸術劇場近くにあるベルジャン ビアバー
『ギボン』のドアを開けました。
ここは、『ブラッセルズ』(前回参照)に8年勤め
3店舗の店長を経験後、独立した
岡博文さんのお店です。

『ブラッセルズ』がざわめきの心地よさだとしたら
ここは、静の心地よさ。
カウンター10席だけの、わずか8.5坪の聖域に
ベン・ハーパーやキャロル・キングが流れ
ひとりで750mlの大瓶を無口に飲んでいる人
雑誌を広げる人
サッカーの話をする人など
ふらりとやって来ては、思い思いに過ごし
帰っていきます。

さて、1杯目のドラフト
「ヒューガルデン・ブロンシュ」の後、
岡さんが進めてくれた1本は
「ロシュフォール8」。
濃いブラウンビールですが
黒糖のような、ドライフルーツのような甘みがありながら
後味はスッキリして、とてもおいしい。
ベルギー南部ナミュール州にある
サン・レミ修道院で造られている
トラピスト・ビールだそうです。
相棒は、聖心ノートルダム修道院の
苦味の利いた「ウエストマール トリプル」を
じんわりと味わいながら
鼻歌を歌い始めました。

日本では、冷えたビールを
ゴクゴクと流し込む、その「喉ごし」が
命ですが、私の場合
ベルギービールは
むしろゆっくり飲みたいビール。
その理由は
自然発酵のため発泡が穏やかだったり、
瓶内熟成が進んでまろやかな味わいに
なっているからだそうです。

それにしても
どうしてベルギービールだったんですか?
と、岡さんに訊ねたら
「そこにベルギービールがあったから」
という、山男のような答が返ってきました。
お店のHPを見てみると
8年前、たまたま『ブラッセルズ』の前を通りかかって……
と書かれています。
本当に「そこにあった」わけで、その店を通して
ベルギーという国を好きになって
現地へも2回行ったそうです。

つまみに、フリッツという
ラードで揚げたポテトを頼みました。
じっくりと時間をかけて揚げられたポテトは
カリッとして、もう手が止まりません。
ベルギーでは、フリッツとは揚げ物全般でなく
このフライドポテトのことを言うのだとか。
「ベルギーは料理もおいしいですよ」
と岡さん。
ムール貝のワイン蒸し、ビールで煮込んだ料理など
とにかく何でもおいしいらしい。
岡さんの淡々とした口調のせいか
このポテトを食べながら聞いているからなのか
それがなぜか、やたら説得力があるのです。

※お店の開店奮闘記がHPに書かれています。
開業したい人の参考になりそうですよ。


■GIBBON(ギボン)
東京都豊島区西池袋3-25-7 TEL 03-3982-9244
URL http://www.gibbon.jp/


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2004年4月21日(水)

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