至福の一皿を求めて おいしさの裏側にある話

第87回
ベルギービールはやめられない

ベルギービールといって
私がすぐに思い浮かべるのは、老舗の『ブラッセルズ』。
その神楽坂店は、
坂道続きのメインストリートから少し外れた
牛込通り沿い、新潮社の隣にあります。
ぽつんと寂しげな佇まいとは裏腹に
ドアを押した途端、さまざまな外国語が溢れ出る
そのざわめきの中を泳ぐように
カウンターへ辿り着き、シートをひとつ確保すれば
ベルギー時間の始まりです。

ベルギービールのドラフト(生)といえば
軽く爽やかな白ビール、ヒューガルデンが定番ですけど
ここでは独自に輸入している銘柄も楽しめます。
この日は、
「グリセット・ブロンシュ」のドラフトからスタート。
スッキリした味わいの白ビールを
駆けつけ一杯に頼んだら
さて、問題はその次です。
何を飲もうか……とビールリストを広げれば
そこには
各醸造所ごとの銘柄や紹介文まで
丁寧に書かれてはいるものの
その数がすごすぎて、絶対に悩んでしまう。
そのうち自分が飲みたいものが何なのかさえも
わからなくなってきます。

でも、ビギナーならそれが当然でもあるわけで
そういうときは素直に、教えを請うに限ります。

……お勧めは何ですか?
「好きなタイプはありますか?」
……それもわかりません。
そんなレベルの客が、たぶん多いのでしょう。
慌てず騒がず
苦味とか甘みとか、香りとか
ほんの少しの手がかりをもとに
店長の西條真弓さんが棚から取り出したのは
「バルバール ウインターボック」。
ベルギー南部、ワロン地方にある
ルフェーブル醸造所のブラウンビールです。

これは蜂蜜を使っているんです、と言われ
専用のグラスに注がれたそれを飲んでみると
ブラウンならではの香ばしさと
舌の上に残る蜂蜜の甘さ。
でも決して甘ったるくはない、やわらかな甘みです。
そう告げると
「南は優しい感じですよね。
ワロンは蜂蜜が名産だから、それを使ってるけど
スパイスやハーブなんかは
ベルギー全土で使われていますし
胡桃とか、苺とかいろんなのがあるんですよ」
と西條さん。

各村々の特産品をビールに入れるのが
ベルギービールの特徴なのだとか。
地方によって味の傾向が違い
しかも、醸造所によって造り方も少しずつ違うため
個性が非常にはっきりとしています。
だから、やめられない。

ベルギーは、まさに地ビールしかない国。
修道院で造っていたり
家族、夫婦だけで造っているなど
そんな醸造所が100箇所以上、
銘柄は800種類以上もあるといわれているのだから
片っ端から飲みまくっても
あと何年かかるか……
なんて壮大な計画を考えては、ため息。


■BRUSSELS(ブラッセルズ)神楽坂店
東京都新宿区矢来町75-1 TEL 03-3235-1890
URL http://www.brussels.co.jp


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2004年4月20日(火)

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