至福の一皿を求めて おいしさの裏側にある話

第106回
泡波の島、人生最高の海の色は?

六本木通りの坂道、
まるで闇夜の猫の眼のように
「A」と光る怪しげなネオンサイン。
これだけが目印です。
ブラックホールに吸い込まれる気分で
真っ暗な階段を下り、ドアを開けると
ふいに、目の前に
はっとするほど鮮やかな色が差し込みます。

店員のかりゆしウエア(沖縄らしいモチーフの開襟シャツ)、
そしてすさまじい数の泡盛のラベルの色。
沖縄の色とりどりが、
黒い店内に
くっきりと浮かび上がっているのです。

ここはオキナワン・バー。
チャンプルや沖縄そばといった定番から、
塩豚に島らっきょ、ゴーヤスライスを巻き
アンダースーという油味噌で食べる
沖縄風生春巻きなどの創作料理もあります。
しかし何と言っても圧巻は
泡盛の品揃え。
300種類ほどあるとのことですが
それよりも
「泡波」が飲めるときもあると書いたほうが
すごさがわかるかもしれません。

「泡波」は波照間島・波照間酒造所で
もともと島の人の分だけ造られている泡盛です。
その稀少性ゆえに
噂が噂を呼んで、誰もが
「泡波」探しに躍起になっているものの
今では波照間島に訪れても
おみやげに持って帰ることはおろか
巡り合うことさえできないといわれています。

「泡波」は、もし運良く島内で買うことができたら
一升でせいぜい1000円程度、
それが石垣島に来ると5000円
本島では1万円以上になると、石垣島の居酒屋で聞きました。
だとすれば東京・六本木ではいくらになるのか。
時価と書かれたメニューを指して
おそるおそる、訊ねてみました。
「30mlで1500円です」
ひょっ。驚いている私の顔を
泡波のラベルはじっと見ています。

複雑な気持ちを抱きつつ
琉球ガラスのでこぼこしたグラスに
幻の泡盛が注がれることとなりました。
最果ての島で生まれたお酒を
慎重に口に含むと、優しい香りが鼻に抜け
味わいはことのほかまろやか。
思わず、目を閉じます。

私は沖縄本島、宮古島、石垣島、竹富島には行きましたが
波照間島は未経験です。
しかし竹富の民宿で出逢った波照間帰りの旅人が
「人生でいちばん綺麗な海を見た」
と漏らした
その言葉がずっと気になっていました。
旅人が見た海と空と風はどんな色だったのか
想像しようとしても、できるはずがありません。
ちょっと悲しい気分で目を開けると
そこには
酒瓶に貼られたラベルのブルーだけがありました。

※「泡波」は、当然無い場合もあるのでご了承を。


■Aサインバー
東京都港区西麻布3-20-13 木村ビルB1 TEL 03-3479-9333


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2004年5月17日(月)

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