至福の一皿を求めて おいしさの裏側にある話

第118回
六本木・星条旗通りに蝉の声

私はグループ行動が苦手で
とくにメンバーが女性ばかりだと
どうしていいかわからなくなってしまうので
あまり近寄ることはありませんが
その日、ワインを飲みに行くという友人が
「5、6人で行った方がいろんな種類が飲めるし」
と漏らした言葉につい、ピクンと反応して
気がつけば、うきうきしながら
六本木の待ち合わせ場所に立っていました。

ワイン・ダイニング『マクシヴァン』は
ソムリエ、佐藤陽一さんのお店です。

『エノテカ・ピンキオーリ』『オストラル』などの
エレガントな舞台を渡り歩いてきた方ですから
さぞやすごいことになっているかもしれない、と身構えて
買ったばかりの服を着て行ったわけですが
入り口で「いらっしゃいませ」と迎えてくれた佐藤さんは
タキシードでも蝶ネクタイでもなく
意外にも
ボタンダウンのシャツでした。

六本木・星条旗通り界隈といえば
おいしいお店がひしめき合っていることでも
知られていますが
通りを横切る陸橋を境に、こっち側はとても静か。
佐藤さんがここに店を構えたのも
物件を下見に来たとき、蝉が鳴いていて
それが「いいなぁ」と思ったからなのだとか。
六本木に蝉の声……。
不思議な気持ちであたりを見回せば
店のあちこちに
映画音楽のCDやアンティーク雑貨が置いてあります。
なんだろう、この安心感。

この日は、4月27日。
連休を前にして、急に気温の上がった雨上がりでした。
駅から歩いてきただけで
うっすら滲んだ額の汗を拭きつつ
席に着くと
「今日は蒸し暑いので軽めに」と
カヴァのロゼ・スパークリング(スペイン)が供されます。
綺麗なピンク色もキリリとした喉ごしも
なるほど、涼やか。
しかし私たち(なんと全員がツワモノだった!)は
あっと言う間に
キュッと飲み干してしまいます。

ということで2杯目は
「パレット シャトー・シモーヌ 2001」。
フランス・プロヴァンスのロゼですが
目をつむって飲むと
「赤ワイン?」と訊ねる人もいるほど
濃厚な味、芳醇な香りです。
少なくとも
私のロゼのイメージは塗り替えられました。
しかしこのサプライズは
まだまだ序の口だったのです……。


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2004年6月2日(水)

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