至福の一皿を求めて おいしさの裏側にある話

第136回
日本橋に誕生したリストランテ

2004年5月、日本橋に
ジェノヴァ料理のリストランテがオープンしました。
ショップカードにもきちんと
「ジェノヴァ料理」と明記されています。
かねてから
イタリアの地方料理にこだわっている店や
シェフ達に注目していた私は、もう興味津々。
イタリア語の先生と一緒に
平日の日本橋へランチを食べに行きました。

今、日本橋へ行くと言うと
必ず友人達には「コレド?」と訊かれます。
しかし私たちが向かうのは、
鳴り物入りの大型商業ビルでなく
中央通りから1本外れたオフィス街の路地に
初々しく佇む、わずか18席のイタリア料理店。
スーツ姿の人波から外れて
その店、『フェア・ドマ』の扉を開ければ
まだ新しい匂いがします。
テーブルにはプレスのきいたクロス。
清潔なナプキンにピカピカのカトラリー。

シェフの松橋ひらくさんは、32歳。
一児の父。
オーナーでもある彼は
この場所にお店を構えるため
実家と中央区と国民金融公庫からお金を借りたそうです。
三越などのある中央通りでなく
路地なのでグッと家賃も安くなった
とは言うものの
なんたってコレドも建ってしまった
再開発のメッカ、日本橋ですから
家賃なんてうなぎ登りではと想像してしまうのですが。

それでもなぜまたこの場所に?
そう訊ねると、松橋シェフは笑って答えました。
「僕のイタリアのイメージなんです」
……え、日本橋が、イタリアですか?
どこがどこが? と、私は
今歩いてきた道の風景を思い出してみます。
彼が言うには
日本橋は
日本銀行や三越本店などの古い建物が残っている
クラシックな街。
それは歴史を背負ったイタリアの街の雰囲気にも似て
ここはイタリアじゃないか!
と感動したのだとか。
地元だったわけでも、マーケティングでもなく
イタリアへの思いだけで
店を構えるという、こんな一大決心ができるなんて
と私も最初はびっくりしましたが
しかし案外
何より必要なのは、そういう気持ちかもしれません。
彼は、これから毎日
石造りの古い建造物の前を通り抜け
この小さな自分の城に通勤するたびに
大好きなイタリアの街を思い出すのです。

シェフの名前「ひらく」は、漢字で「展」と書くそうです。
ジェノヴァ料理『フェア・ドマ』は
サービス、コペルト料金無しで今、動き出しました。


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2004年6月28日(月)

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