至福の一皿を求めて おいしさの裏側にある話

第137回
日本に似た場所、ジェノヴァの味

日本橋にオープンした
リグーリア州ジェノヴァ料理のリストランテ『フェア・ドマ』。
オーナーシェフの松橋ひらく氏は宮城県出身です。
地元仙台でイタリア料理を始め、
「修業するならリグーリア」と決めて、
1つ星リストランテ
『ラ・ビッタ・ネッラ・ペルゴラ・ディ・ジェノヴァ』と
地元に根づいている庶民的な店『ゼフィリーノ』という
タイプの違う2軒で計8ヶ月間修業しました。
日本人コックに人気の
トスカーナやカンパーニャには目もくれず
リグーリア州狙い打ち、というのがおもしろい。

リグーリア州は
北イタリアのフランス寄りから海に沿ってトスカーナの北まで
細長〜く伸びた州です。
海があって、すぐ山が迫り、森が茂って
イタリアならどこにでもあるはずの牧草地や葡萄畑が無い、
小さな日本みたいな地形なのだとか。
ジェノヴァの料理と訊いて、私の頭に浮かんだのは
お粗末ながら
ジェノヴェーゼ(バジリコと松の実のペースト)のパスタと
いわしの塩漬けと魚介だけでしたが
日本によく似た風土で
魚介がおいしいこの土地の料理なら
日本人に受け入れやすいし、日本の食材も生かせる
と松橋シェフは考えたそうです。

ただ、『フェア・ドマ』のメニューを見ると
あれ?と思うかもしれません。
カポナータ(シチリアの煮込み料理)や
ンドゥイヤ(カラブリアのサラミ)など
リグーリア州以外の料理や食材なども使われているからです。
松橋シェフは
「僕の拡大解釈ですが」と前置きしつつ、こう言いました。
「昔から港町として栄えたジェノヴァは
カラブリアやシチリア、
チュニジア、サルデーニャ、コルシカなどとの
交易が盛んだったんです。
だから文化や食材、料理も混ざり合ってきたのではないかと。
僕は、ジェノヴァの伝統料理の基本を守りながら
そういった各港町の要素も取り入れていきたい」
魚介を使った港町の料理は
「子どもの頃から、母の田舎でホヤを獲ったり
ウニのイガイガでケガしたりしてた(笑)」
という松橋シェフ自身の
重要なテーマなのかもしれません。
実際、この店では石巻で獲れた魚などを
宮城の魚屋から送ってもらっています。

もちろん、だからといって
魚介オンリーというわけではなく
チーマと呼ばれる仔牛の肉や卵、野菜などを詰めたものや
レバーのパテも、もちろん手作りしていましたし、
はんこのような木型で型抜きした
コルツェッティ・スタンパーティなど
手打ちパスタも今後登場する予定だそうです。
それにしてもイタリアは、その土地ごと、地域ごとに
本当にさまざまな料理が育っているからやめられません。
はんこのパスタ、食べなくちゃ。


■FEA DOMA(フェア・ドマ)
東京都中央区日本橋本町2-1-14 石橋ビル1F TEL 03-3272-5208


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2004年6月29日(火)

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