第26回
目の色が変わった話

会社にお勤めの方は、そろそろボーナスの時期でしょうか。
いたる所でボーナスをターゲットにしたセールが開催されますので
セール好き、バーゲン好きの方はお買い物の事で頭が一杯なんて
事になっているかもしれませんね。

かく言う私も大のバーゲン好きでした。
商社に勤めていた頃は、社販（社内販売）というのがあって、
過剰在庫になった商品やシーズン外のもの、Ｂ級品等が
それこそ５割から９割くらいの大値引で買えるんです。
「もうこれは買わなきゃ損！」という事で
とにかく買い漁っていました。
山のように積まれた洋服に群がる女性の群れ。。
熱気ムンムンで若干空気が薄くなっているような
息苦しさすら感じたものです。
一つの商品を２人の女性が引っ張り合っている
コントのような光景でさえ珍しくはありませんでした。
傍から見れば見苦しい事この上ない姿です。
私も「嫌だわ〜」と軽い嫌悪をおぼえつつ、
一旦群れに飛び込んでしまえば、いつのまにか我を忘れ
洋服を掴み取っていました。

あるバーゲンの時、会社の同僚に
「チエさん、目の色が変わっているよ」と言われた事があります。
私はその言葉に「はっ」と我を取り戻しました。
正直、とてもショックでした。。。
私はバーゲンに夢中で自分自身を忘れてしまっていたのです。
「買いたい！」という欲望に支配されていたのです。
冷静になって両手につかんだ洋服をしみじみと見てみれば
特に欲しい服ではありませんでした。
それどころか私に全然似合いそうもない服でした。
もう恥かしくて仕方がありませんでした。

バーゲンやセールで安く買う事が恥かしかったのではありません。
自分を見失っていた事、コントロールできなくなっていた事、
そしてそれを人の目にさらしていた事が恥かしかったのです。
「自分が欲しいものは何か」「似合うものは何か」を考えずに
とにかく安いからと夢中で買っていたのでした。
その事を気づかせてくれた同僚にはとても感謝しています。
それ以降私はバーゲンでもよく吟味して
冷静に判断するようになりました。
それと共にタンスの肥やしがだんだん減って
お部屋も片付いてきました。
いいこと尽くしです。

バーゲンで熱くなる方、目の色が変わっていないか
この夏にチェックしてみてはいかがでしょうか。