服飾評論家・出石尚三さんが
男の美学をダンディーに語ります

第103回
着物の上手な手入れ法

衣桁(いこう)という言葉を知っていますか。
これは着物などを一時的に掛けておくための
台のようなものです。
形は鳥居を平行線にした状態で、
屏風のように折り畳みできるスタイルもあります。

むかしはたいていの家庭にもあったものですが、
今でも和風旅館ではよく見かけることがあります。
鳥居形ではなく、もっと簡単な、
ハンガーを直線に伸したような形のものもあります。
これは「衣紋掛」(えもんかけ)とも
「衣桁」とも呼ぶものです。

どうして衣桁や衣紋掛が使われたのか。
それは着物を着た場合、
脱いでもすぐには畳まなかったからです。
着物を一日着るとどうしても汗ばんだりするので、
その湿気をとばすために、
少し風を通してから畳む習慣があったのです。

下着や足袋はたいてい木綿ですから、
脱いだらすぐに洗えば良いわけです。
けれども長じゅばんや着物は絹で、
そうそう洗ったりするものではありません。
でも、すぐに畳んでしまったのでは
カビのもとになったりします。
とにかく一度袖を通した着物は
すぐに畳まないのが常識です。
どうしても時間がない場合には、
衣桁に掛けた状態で扇風機の風をあてると、
かなり時間短縮ができます。

完全に湿気が抜けたところで、畳みます。
畳んだあとは「畳紙」(たとうがみ)に包んでしまう。
最初着物を買ったときにも畳紙に入っているはずです。
畳紙のなかには着物と一緒に防腐剤を入れ、
湿気の少ない場所に収納して下さい。
こうしておけば、次に着るときにも、
すぐに袖を通せるはずです。

着物はもとを正せば一枚の布で、
畳むと完全にフラットな状態になる。
これは着物ならではの特徴でしょう。
シワにならず、積み重ねることができる。
しかもこの一枚の布であることを利用して、
いつでも仕立て直しができる。
一生物どころか、2代3代にわたって永く着ることも可能。
もう一度着物の良さを見直そうではありませんか。


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2003年1月4日(土)

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