服飾評論家・出石尚三さんが
男の美学をダンディーに語ります

第234回
俳句を詠んでみませんか(2)

歳時記を読んだことがありますか。
ほんの少しでも興味を持てば、
歳時記を読んであきることがありません。
歳時記はたいてい小型本で、
かさばらず、旅の鞄に入れるにも最適です。

俳句を詠もうとする時には、
歳時記にはじまり歳時記に終る、
と言っても過言ではないほどです。
でも、私などもなにがなんだが、
さっぱり分らない句があります。
いや、理解できない句のほうが多いのではないでしょうか。

俳句が完成したのは江戸時代のことで、
江戸の頃の話を織り込まれたのでは、
分るはずもありません。
もっとも私が無教養であるのも原因のひとつでしょうが。
たとえばこんな句があります。

寝白粉香にたちけり虎が雨(草城)

日野草城という俳人の詠んだ句。
もちろん素人の作ではありません。
けれども、どうもよく分らないところがあります。

「寝白粉」。「ねおしろい」と読みます。
むかしの女の人は寝る時、薄化粧をしたんですね。
寝化粧。その寝化粧の白粉の匂いが、
きょうはことさらに感じられるなあ、という情景です。

主語はもちろん「虎が雨」。
夜で、雨が降っている。
曽我兄弟の物語を知っていますか。
建久4年(1193年)5月、曽我兄弟は富士の裾野で親の仇を討つ。
このため旧暦5月28日、処刑される。

ところが兄の十郎には恋人がいたんですね。
大磯の遊女、虎御前。
虎御前は恋人の十郎が死んだので、泣きに泣いた。
それからというもの、なぜか毎年5月28日には雨が降る。
これを「虎が雨」と呼ぶようになったのです。

ところがある年、たまたまこの日雨が降らなかった。
「年ふれば虎もなみだや忘れ草」(鬼貫)。
江戸の俳人はこんな風に詠んでいます。
たぶん、これは待っていたんですね。

俳句を詠むことは
日本文化の勉強にもつながるのではないでしょうか。


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2003年5月15日(木)

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