服飾評論家・出石尚三さんが
男の美学をダンディーに語ります

第242回
小さな小さな私の夢

探している本が見つからないという経験はありますか。
私などもよくそんなことがあります。
たとえばゲール語の辞典がありません。
ゲール語はむかしスコットランドで使っていた言葉。
タータン・チェックの研究には欠かせない辞書なのですが、
私はまだ手に入れることができないでいます。

これはまあ特殊な例かも知れませんが、
今、とくに本が探しにくくなっているように思うのです。
まず出版の数が多い。次に新刊の回転が早い。
新書や文庫でさえ、その傾向があります。
一度絶版になった本を探すのは
容易なことではありません。

そこで私のささやかな提案ですが
“ブック・ブティック”というのはどうでしょうか。
専門書の専門店。
たとえば花の本だけを揃えた本屋さん。
花ではまだ範囲が広すぎるなら、
バラに関する本だけを集めた本。
日本でたった一軒だけの、バラの専門書の専門店。
つまり特定のテーマに絞り込んだ専門店が
“ブック・ブティック”です。

もし私がなにかやるとすれば、
ファッション関係の専門店。
ファッション以外の本は置かない。
その代り新刊、古書はもとより、
和書、洋書の別を問わない。
いや書籍だけではなく、内外の雑誌なども置いてある、
ファッションのブック・ブティック。
もちろん日本に一軒だけ。

どうせそんな店は暇で、
一日に2、3人の客しか来ないでしょうから、楽なものです。
店番の私としては好きなだけ本を読むことができます。
原稿だって書くことができます。
なにしろ資料は売るほどあるわけですから、
いくらでも書くネタはあります。
また店に来てくれたなら、人に会うこともできます。
これこそ一石三鳥です。

壁の両側に本。
中央には椅子とテーブルがあって、コーヒーが飲める。
軽い食事ができる。
時間によってはワインも飲める。
喫茶店であり、バァであり、食道であり、本屋であり。
こんな夢想を楽しむのも頭の体操なのです。


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2003年5月23日(金)

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