服飾評論家・出石尚三さんが
男の美学をダンディーに語ります

第474回
私のファンシー・ベスト物語

オッド・ベストを着たことがありますか。
ファンシー・ベスト、変りチョッキのことですね。
ある方から、私自身の変りチョッキについて、
お便りを頂いたので、お話しましょう。
どこかで私のオッド・ベストを
ごらんになったのかも知れません。

最近でこそあまり着なくなりましたが、
むかしは本当に好きで、よく着たものです。
もう今から30年近く前のことです。
では、なにがきっかけで
ファンシー・ベストを着るようになったのか。
それはパリではじまりました。

パリに限らず、私は外国に行くと、よく歩きます。
それも高級商店街ばかりでなく、
生活の匂いの感じられる下町をも歩きます。
足の向くまま歩いていると、
1軒のカーテン屋がありました。
室内装飾店というのでしょうか。
とにかくカーテンや椅子張りなどに使う生地だけを、
たくさん並べている。
面白い生地がたくさんあるなあ、
と店の中に入ってゆくと、
まるで見本のようにチョッキが吊るしてある。
ただしちゃんと値段がついているので、
立派な商品で、それを買ったのがはじまりです。

そのファンシー・ベストは絹のカーテン地で、
あるいは余り布が出たので、
それを利用したのかも知れません。
チョッキは背裏を別に考えれば、
比較的少ない生地量で仕立てることができるのです。
絹のカーテン地、残布(ざんぷ)を捨てるのはしのびない。
いずれもなるほどパリらしい考え方ではありませんか。
そしてその仕立てをよく見ると、
どうも洋服屋の発想ではなくて、
いかにも室内装飾の職人が、
片手間に縫ったような、簡単な仕立て方で、
これもまた面白いなあ、と思ったものです。

私自身のファンシー・ベストの話をするつもりが、
長くなってしまいました。
とにかくむかし、その1枚の変わりチョッキから、
私は多くのことを学びました。
その感謝の心をこめて、以来ずっと愛用した、
と言えばキザでしょうか。


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