服飾評論家・出石尚三さんが
男の美学をダンディーに語ります

第486回
珍しい夕食に思うこと

寒食という言葉を聞いたことがありますか。
寒食(かんしょく)は古い中国の風習とのことです。
別名を、禁火。
つまり火を使わないで、
冷たいものだけで食事をすること。
寒食は日本にも伝えられましたが、
禁火は日本のふつうの辞書には出ていません。

冬至(12月22日頃)から数えて
105日の3ヶ月間が、寒食の時期とされた。
この頃は風が強く、火事になることも多いので、
禁火、つまり火を使うことを避けたのだろう、
と考えられています。

「寒食に火くれぬ加茂を行(ゆく)や我」(太祇)
という句があります。
これは江戸中期の俳人で、僧でもあった、
炭太祇(たん・たいぎ)の作です。
「加茂を通ったけれど、今日は寒食の日なので、
 火を使っていなかったなあ」という内容でしょう。
ということは日本にも寒食の習慣があったのでしょうか。
さあ、分りません。

寒食の起源に次のような説もあります。
むかし中国は晋(しん)の王、文公についての物語。
文公は地位につくまで
下臣の子椎(しすい)と19年の間、苦労をした。
が、王となった時、子椎を重用しなかった。
で、子椎は祿を捨てて、綿山に隠れ住んだ。
後で子椎の才を惜しんだ文公、
呼び戻そうとして綿山に火を放った。
大火おさまると、子椎は木を抱いて焼死していた。
文公はこれを悲しんで、
毎年この日には火を使うことを禁じたのだという。

寒食がどのようにはじまったかはさておき、
たまには我われも見習っても良いのではないでしょうか。
ことに私は日頃ちょっと食べすぎているようです。
年に1回の寒食なら、むしろ大歓迎。
だってよく考えれば、まったく火を使わなくても、
夕食を楽しむことはできますよ。

美味しいパンと、ハム、ソーセージ、チーズ・・・。
となると当然、赤ワインが欲しくなってくる。
野菜スティックなんかも良いかも知れない。
寒食、結構。
でも自分とともに苦労した人間は、
やはり大切にするべきでしょうね。


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