服飾評論家・出石尚三さんが
男の美学をダンディーに語ります

第512回
60秒のメディテイション

万華鏡の考案者が誰であるか、
知っていますか。
筒のなかに美しい小さな装飾と、
鏡とが入っていて、
筒を回すことによって、
次つぎに模様を変えてゆくカラクリですね。
英語では“カレイドスコープ”と呼ぶことは、
ご存じの通り。

カレイドスコープを発明したのは、
イギリスの物理学者、
サー・ディヴッド・ブルースター(1781〜1866年)。
1817年に考案し、同じ年に特許を得ています。
ことに偏光の研究で知られ、
今なお「ブルースターの法則」という言葉があります。
これは屈折率と偏光角との関係を示す
方程式なのだそうです。

そういう難しい話はさっぱり分りませんが、
万華鏡は大好きです。
まるで女の子みたいじゃないか、
などと言わないで下さい。
この間も小さいカレイドスコープを
ひとつ買ったばかりなのですから。
時折、足を運ぶ有楽町の「アートステーション」
(TEL:3286-6716)で見つけました。
手のひらに収まってしまうくらいの、
本当に小さなカレイドスコープ。
でも、この威力にはおそるべきものがあります。
どうやら透明な回転軸のなかに
オイルが入っているらしい。
で、そのオイルの中に無数の装飾が浮かんでいる。
だから模様がいっそう多様多彩で、
なおかつその動きがゆっくりと滑らかなのです。

とにかく1本600円という値段だから、
軽い気持で、またオモチャがひとつ増えた、
というつもりだったのです。
ところが、どうしてどうして。
1時間でも2時間でものぞいていたい気持になります。
美の天体のなかで、
宇宙遊泳している気分になること間違いなし。

磨いたばかりの靴を踏みつけられても、
このカレイドスコープでさえあれば、
怒る気持も消えてしまいます。
本来はキイ・ホルダーとしても使えるのですが、
私はそれを取って、細い革紐を通して、
首から下げています。
即席のカレイドスコープ・ペンダントです。
美の宇宙に行きたい時は、
いつでもこれを使えるからです。


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