服飾評論家・出石尚三さんが
男の美学をダンディーに語ります

第593回
古くて新しいTV・ホールド・スタイル

TV・ホールドというのを知っていますか。
これは上着の胸ポケットに
ハンカチーフを飾る時のスタイル。
約1インチほど胸ポケットに沿って
直線的にのぞかせるやり方です。
かつてアメリカのニュース・キャスターが
これを好んだところから、
その名前があります。
でも、今ではむしろ
時代がかったあしらい方だと
感じているむきもあるでしょう。

“ニュース・キャスター”はその昔、
ラジオのニュース解説者の名称だったもので、
TVの場合はふつう
“アンカー”もしくは“アンカーマン”という。
この“アンカーマン”の言葉を発明したのは、
当時CBSニュースの社長であった、
シグ・ミケルソンという人物だろうと考えられています。
1952年のことです。
で、シグ・ミケルソンの写真を見ると、
上着の胸ポケットに
TV・ホールド型のハンカチが
飾られているのです。
おそらくこの頃が
“TV・ホールド”の草創期ではないでしょうか。
詳しくは『クロンカイトの世界』
(浅野輔 訳 TBSブリタニカ刊)をお読み下さい。

このウォルター・クロンカイト(1916年生まれ)こそ、
はじめてアンカーマンとなった人物なのです。
1950年、夕方6時からニュースを担当した。
初期のTVカメラは
すぐにハレーションを起すので、
必ず無地の上着、シャツ、タイでなければならなかった。
W・クロンカイトはそのため
「ウッドワード&ロスロップ」という店で
一日で仕立ててもらったとのこと。
おそらく後年のTV・ホールドの流行は、
このクロンカイトがはじめたものでしょう。

夏の、コットンやリネンの上着を羽織る時、
TV・ホールドが応用できます。
シルクのポケッチーフを、
あえて四角に畳んで、
柔かく、1インチほどのぞかせる。
ごくさり気なくて、新鮮な感じのするものです。
もちろん白無地のシルクだけでなく、
水玉やペイズリー柄、様ざまな色柄を
自由に楽しめるでしょう。
TV・ホールドというより、
私としてはむしろ「アンカーマンスタイル」と
呼びたいところなのですが。


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