服飾評論家・出石尚三さんが
男の美学をダンディーに語ります

第611回
ボタンと着こなし

今着ている上着は2つボタンですか、
3つボタンですか。
もちろんこれはシングル前のジャケットのことです。
ダブル前の場合には
2つボタン、4つボタン、
6つボタンとふえてゆくわけですが、
まあ、それはさておき
シングル前の上着に限って話をすることにしまよう。

業界用語では「S2B」「S3B」と略称することがあります。
でも、実際にはボタンの数だけでなく、
シルエットとボタン位置によっても
その印象は大きく変ってきます。
単にボタン数だけでは
結論をくだせない一面があります。
けれども2つボタン型と
3つボタン型に共通しているのは、
一番下のボタンははずしておくのが
原則となっていることです。

では、なぜそうなのか。
上着の理想はシワが出ないことなのです。
一番下のボタンを留めた場合、
直立状態でもかすかなシワが出るはずです。
少しでも身体を動かすと、
はっきりボタンを中心にシワがあらわれます。
もしシワが出ないとすれば、
それは服がルーズすぎる証明です。
洋服とはそのように作られるべきなのです。
つまりシワが出ない場所に
留めるべきボタン位置が設定されているのです。

フィットした上着を着て、
ソファーにゆったり腰を下ろす場合には、
必ず前ボタンを外しておく。
これはもう常識でしょう。
少しでもシワにならないように考えることが、
上手な着こなしにつながるわけです。

もし第1ボタンを留めただけで、
シワがある場合には
服が窮屈であることのサインです。
その原因はたぶん体型の変化でしょう。
私もその経験があります。
窮余の一策。
もうひとつボタンを付けたことがあります。
すでに付いているボタンの真裏に
似たようなボタンを付ける。
で、その裏側に新しく付けたボタンで留める。
つまり昔のタキシードのような留め方を
あえてするわけです。
俗に「拝合わせ」の言い方があります。
英語では“リンク・フロント”です。
少なくともボタンを上手に扱うことで
着こなしの幅が拡がることは間違いありませんよ。


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