服飾評論家・出石尚三さんが
男の美学をダンディーに語ります

第664回
これぞ理想のスーツ

本当のおしゃれとは何か、
と考えたことがありますか。
私も毎日考えていますが、
今なお結論に至っていません。
ですからこれはひとつの仮説と思って下さい。

まったく何も着ていないかのような状態。―
これこそ本当のおしゃれだと思います。
色はナントカで、柄はカントカで・・・。
上から下まで全部説明したくなるような着こなしは、
まだまだ勉強中といったところでしょう。
なんでもないような服を、
なんでもない様子で着ている。
だからまるで何も着ていないかのような印象を受ける。
これこそたどり着くべき
男の理想ではないでしょうか。

たとえばグレー・フラノのスーツがあります。
ことにミディアム・グレーのフラノ。
まさに平凡を絵に描いたような生地です。
かつて私の友人の洒落者が、
同じグレー・フラノのスーツを
30着仕立てたことがあります。
ごくシンプルなデザインのスーツで、
ただミディアム・グレーの色調を
少しづつ変えて作ったのです。
そしてそのなかの、やや淡いミディアム・グレーの
フランネル・スーツを着た時、
一瞬なにも着ていないような気持がした、というのです。
これは「本当のおしゃれ」を考える上で
ひとつのヒントになるのではないでしょうか。

だからというわけではありませんが、
あらためてグレーのフラノのスーツを着たいなあ、
と思いはじめています。
シングル前の3つボタン型スーツ。
ごく当り前のデザインで、
色調を違えて3着あれば大満足です。
淡いグレイのシャツに
ダーク・グレイのネクタイを結んでみたい。

3着のスーツで、
ジャケットとパンツがあるとすれば、
計6通りの着こなしが可能になります。
仮にチョッキが加わったなら、
9通りになるでしょう。
このようなミックスの着こなしのなかで、
どれがもっとも自然に感じるかを、
試してみたいのです。
静かではあるけれど、存在感のある着こなし。
とりあえずそのあたりから
もう一度勉強をはじめてみたいのです。


←前回記事へ 2004年9月13日(月) 次回記事へ→
過去記事へ 中国株 起業 投資情報コラム「ハイハイQさんQさんデス」
ホーム
最新記事へ