服飾評論家・出石尚三さんが
男の美学をダンディーに語ります

第759回
足すか引くか、それが問題です

縞柄のシャツにするか、無地のシャツにするかで、
迷ったことがありますか。
ストライプのシャツにも、また無地のシャツにも
それぞれの良さがあります。
どちらが良いという問題でもありません。
そしてこれはシャツだけでなく、
ネクタイやスーツにも言えることでしょう。

たしかに縞柄のシャツに
あえて縞柄のネクタイを結んで、
“パターン・オン・パターン”という
おしゃれの方法があります。
時にはスーツの柄もまた縞柄ということもあるでしょう。
が、これはかなり上級者向けの、
高度な組合わせ方です。

このような、いわば「足し算」のおしゃれもあれば、
「引き算」のおしゃれもあります。
そして順序としては
まず引き算のおしゃれを完全にマスターし、
その次に足し算に移っても遅くはありません。
そして初心者の場合には、
必ず「引き算」の美学のほうが有利なのです。
たぶん第三者も心のなかでは「引き算」のほうを、
「上品だなあ」とか「シックだなあ」と
思ってくれるはずです。

服装の組合わせに少しでも迷ったなら、
「引き算」を考えて下さい。
なにを、どんなふうに引こうか、と。
そんな場合に役立ってくれるのが、
無地のネクタイです。
少し上等な、見ていてあきの来ない色の、無地。
もし店などで自分な好きな色調の、
無地のネクタイが並んでいたなら、
少し位むりをしてでも買っておきましょう。

たとえば複雑な色調のシャツを着ようとして、
合わせるネクタイに困ったなら、
たぶん救世主のような存在となってくれるはずです。
「引き算」の美学を徹底的に追求したひとりが、
往年のケイリー・グラント。
彼はたいていの場合、
無地のスーツに無地のシャツとタイ。
それでいて当時の人たちは、
「ケイリー・グラントほどおしゃれな俳優はいない」
と噂したものなのです。

昨今の足し算型が多いなかで、
かえって引き算の美学が
より美しく見えるのではないでしょうか。


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