服飾評論家・出石尚三さんが
男の美学をダンディーに語ります

第797回
花を召しませラン・ラ・ラン

ネルソン・マンデラを知っていますか。
かつて南アフリカ民族会議の議長であった人物。
1993年にはノーベル平和賞をも受けています。
南アフリカについて詳しくない私が、
なぜN・マンデラを知っているのか。
それはマンデラ氏がかなりの洒落者であったからです。

その例をひとつだけ挙げるなら、
ブートニエール(飾り花)の愛好者でありました。
いつであったか、
ダーク・スーツに赤いカーネーションを
挿している姿を見たことがあります。
“ブートニエール”boutonniere が
襟元にあしらう「飾り花」であることは、
たぶんご存じでしょう。

“ブートニエール”は本来フランス語で、
「ボタン穴」のことですが、
いつの間にかそこに挿す装飾的な花を
意味するようになったのです。
ただし主として19世紀以前の男の着こなしで、
20世紀以降ゆっくりと衰退してゆく。
今、ごくふつうの男で
いつもブートニエールを挿しているというのは、
いないのではないでしょうか。
「服は世に連(つ)れ、世は服に連(つ)れ」
といったところです。

しかしそうであるにもかかわらず、
なぜブートニエールなのか。
それは最近、花屋の店先に
ミニ・バラが並んでいるのを見つけたからです。
大輪のバラを襟先に挿す勇気はなくても、
あの可愛いミニ・バラなら
それほどの抵抗はないと思います。
もちろん花はバラに限らず、
小型のものなら何であれ
応用できるのではないでしょうか。

現代人は忙しい。
オフィスを出て、ビジネス・スーツ姿で
パーティーに行くこともあるでしょう。
ディナーやオペラを愉しむこともあるでしょう。
そんな時、ちょっと花屋へ寄って、
1本のミニ・バラを買う。
ランチ・タイムに買っておいて、
コップに水を入れて飾る。
そしてアフター・シックスには襟元に飾る、
という方法もあるでしょう。

ブートニエールを飾るべきか否か。
もし自分の存在や行動を
しっかり人に印象づけたいなら、
ぜったいに効果的でしょう。


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