服飾評論家・出石尚三さんが
男の美学をダンディーに語ります

第813回
大人のためのウエスタン・ジャケット

ウエスタン・ジャケットを着たことがありますか。
ふつう日本では
「Gジャン」の名で呼ばれることが多いものです。
「Gパン」のジャンパー版であるところから、
「Gジャン」の俗称が生まれたものでしょう。
もちろん「Gパン」も「Gジャン」も
純然たる和製英語です。

アメリカではたいていは
“ウエスタン・ジャケット”。
“ウエスタン・シャツ”のジャケット版
といったところでしょう。
さて、このウエスタン・ジャケットを
若者専用と考えるのは、
大きな損失だと思うのです。
あのシルエットとあのデザインを見ていて、
つくづく良く出来ているなあ、と考えてしまう。
少し大げさな表現をするなら、
今、もっとも21世紀的な
ジャケットではないでしょうか。
キビキビとしてムダなところがなく、
シワや汚れを気にすることなく、
カジュアルな場面であれば、
どんな組合わせでも、
どんな所にも着て行ける点で。

でも、私がこう言っただけでは
説得力に欠けるでしょう。
よろしい、映画『荒馬と女』をぜひ観て下さい。
M・モンローもさることながら、
この場合はクラーク・ゲイブルを。
彼が老牧童という設定ですから、
当然のようにジーンズにウエスタン・シャツに、
ウエスタン・ジャケット。
これが実に様(さま)になっている。
なるほど、これは大人のためにこそあるんだなあ、
と思ってしまうでしょう。
『荒馬と女』は、ゲイブルの
ウエスタン・ジャケットの着こなしを見学するだけでも
観る価値があります。

今、私が欲しいなあと考えているのは、
Leeの、白いウエスタン・ジャケットです。
Leeが“スリム・ジャケット”の名で
それを登場させたのは、1931年のことですが、
これはファッション・デザインの
傑作と言って良いでしょう。

この白いウエスタン・ジャケットを
まるでシャツ・オン・シャツのような、
軽快な気持で着てみたい。
内側のシャツはゲイブルにならって、
黒や紺のシャツを選びたいものです。


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