服飾評論家・出石尚三さんが
男の美学をダンディーに語ります

第968回
吝嗇の美学

吝嗇という言葉を知っていますか。
もちろん「りんしょく」と訓んで、
倹約家のことです。
ケチというと少し意味が強すぎるような気がしますね。
けれども「倹約」「吝嗇」なら、
なんとなく許せるのではないでしょうか。

類語辞典を開いてみると、
慳嗇(かんしょく)鄙吝(ひりん)
慳吝(かんりん)貧吝(たんりん)・・・
などをはじめ数多くの表現が並んでいます。
時に「しわい」とか
「せちべん」なんて言い方をすることもありますね。
まあそれだけ吝嗇(りんしょく)にも種類があり、
また歴史も古いということなのでしょう。

かのアメリカの財閥
モルガン・ジュニア(1867〜1943年)について
こんな話があります。
ある時、海運王といわれたオナシスが
数千万単位のビジネスを紹介したことがあるそうです。
それが結果としてうまく行った後、
モルガンはオナシスに電話をかけて、夕食に誘う。
「あなたにはたいへん世話になったので、
 せめて夕食でもごちそうしたい。」
約束の時間にモルガンは
オナシス家を歩いて訪ねた。
オナシスのロールス・ロイスに同乗してレストランへ。
着いた所は学生食堂であった。
オナシスは驚きを隠して
「どんなふうにしてこの店を見つけましたか?」と訊ねる。
「なあに、学生新聞を読んでおりますと、
 実に有益な記事がありますからね」とモルガン。

ひとり500円位のディナーが終った後、
モルガンは勘定を払い、
オナシスはプラスチックの箸を持ち帰ったという。
「これだっていつなん時役立つかも知れませんね」と。

まあ、ここまでくれば
両人どちらも大吝嗇家として、
むしろ尊敬すべきでしょう。
吝嗇はいとたやすきことではありますが、
要はそれをいかに上品に行うか。
少なくとも他人に
悪印象を与えずに行うかが問題であります。
私も日々、恰好いいケチとは何だろうと
考えているのですが、難しい。

けれどここにひとつだけ方法があります。
それは富豪になること。
世間というものは
富豪の吝嗇(りんしょく)に関してだけは
寛大なのですから。


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